
宿直・日直の許可と手当|断続的な勤務を労働時間から外す条件
「土日の日直、昔から当番でやってもらってるけど、あれって勤務時間に数えてたっけ」。 勤怠を締めている途中で、ふと手が止まる。当番表は何年も前からあって、手当も毎回出している。でも、その時間を労働時間としてどう扱っているのか、誰に聞いても「前からこうだから」としか返ってこない——。宿直・日直は、そんなふうに「引き継がれたまま理由が分からない仕事」になりやすいところだと思います。
宿直・日直には、労働基準監督署の許可を受ければ、労働時間・休憩・休日の規制から外せるという仕組みがあります。ただ、裏を返すと、許可がなければ、当番の時間は通常の労働時間として扱うのが原則です。
この記事では、許可を受けられるのはどんな勤務か、宿日直手当はいくら以上必要か、許可後に通常の仕事が入ったらどうするか——を、ひとり労務の目線で順番に整理していきます。
結論:宿直・日直を労働時間の規制(法定労働時間・休憩・休日)から外せるのは、所轄の労働基準監督署長の許可を受けたときだけです(労働基準法第41条第3号、同法施行規則第23条)。許可の目安は、①ほとんど労働する必要のない勤務(定時の巡視、緊急の電話や文書の受付、非常時に備えた待機など)であること、②宿日直手当が、同じ勤務に就く労働者の賃金の1人1日平均額の3分の1以上であること、③回数が原則として宿直は週1回・日直は月1回までであること、④宿直なら相当の睡眠設備があること、の4つです。許可を受けていても、当番中に通常の業務をした時間は労働時間として扱い、割増賃金の対象になります。個別の許可の可否は、勤務の実態をふまえて社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご確認ください。
見ていく順番は、次のとおりです。
- まず、いまの当番が許可を受けているかを確かめる
- 勤務の中身が許可の基準にあてはまるかを見る
- 宿日直手当の最低額を計算して、いまの手当と比べる
- 許可後も残る実務(通常業務が入ったときの扱い)を押さえる
何が起きているか:「当番だから労働時間じゃない」わけではない
まず、いちばん誤解されやすいところから整理します。
宿直・日直というと、「寝ているだけ」「電話が鳴ったら出るだけ」なので労働時間ではない、という感覚を持たれがちです。でも、法律上の考え方はその逆で、会社の指示で事業場にいて、何かあれば対応することが求められている時間は、原則として労働時間にあたります。
実際に、ビル管理の仕事で仮眠時間が労働時間にあたるかが争われた裁判(大星ビル管理事件・最高裁 平成14年2月28日判決)では、仮眠中も警報や電話への対応が義務づけられていた事情から、仮眠時間も労働からの解放が保障されているとはいえず、労働時間にあたると判断されています。
そこで用意されているのが、宿日直の許可という仕組みです。
宿直・日直(宿日直)…通常の勤務とは別に、夜間(宿直)や休日の日中(日直)に事業場にいて、定時の見回りや電話番、非常時の対応に備える勤務のこと。労働基準監督署の許可を受けた場合に限って、労働時間・休憩・休日の規制の対象から外れます。
条文でいうと、労働基準法第41条第3号(監視または断続的労働に従事する者で、行政官庁の許可を受けたもの)と、労働基準法施行規則第23条(断続的な宿直または日直の勤務で、所轄労働基準監督署長の許可を受けたもの)が根拠になります。
ここで押さえておきたいのは、許可は「申請すれば出る」ものではなく、勤務の実態を見て判断されるということです。申請の後、労働基準監督署が実際の勤務の様子や宿直室を確認しに来ることもあります。
「うちの当番、許可なんて取っていたかな」と思ったら、まずはそれを確かめるところからで大丈夫です。総務の書庫に「断続的な宿直又は日直勤務許可書」が残っていれば、許可を受けています。見つからなければ、所轄の労働基準監督署に問い合わせれば確認できます。
具体例:許可の4つの基準を、自社の当番にあてはめる
許可を受けられるかどうかは、厚生労働省の通達(昭和22年9月13日発基第17号、昭和63年3月14日基発第150号)で示された基準で判断されます。自社の当番を思い浮かべながら、一つずつ見ていきます。
① 勤務の中身:ほとんど労働する必要のない勤務か
認められるのは、常態としてほとんど労働する必要のない勤務です。通達では、次のような業務が例として挙げられています。
- 定時の巡視(見回り)
- 緊急の文書や電話の受付
- 非常事態に備えた待機
逆に、ふだんの仕事の続き(受注の処理、製造ラインの稼働、接客、レジ打ちなど)を宿直・日直の時間にしてもらう形は、原則として許可の対象になりません。「当番の時間にたまった事務を片づけてもらう」という運用も、この点で引っかかります。
② 宿日直手当:1人1日平均額の3分の1以上か
宿日直手当は、1回あたり、その宿日直に就く予定の同種の労働者に支払われている賃金の、1人1日平均額の3分の1以上が必要です。ここでいう賃金は、割増賃金の計算の基礎になる賃金に限られます(家族手当や通勤手当などは除きます)。
計算の例を置いておきます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 宿直に就く人たちの、割増賃金の基礎となる月の賃金(平均) | 240,000円 |
| 1か月の所定労働日数 | 20日 |
| 1人1日平均額(240,000円 ÷ 20日) | 12,000円 |
| 宿直手当の最低額(12,000円 ÷ 3) | 4,000円以上 |
何年も前に決めた手当の額のまま、基本給だけが上がってきた——という会社では、いつの間にか3分の1を下回っていることがあります。昇給のタイミングで一緒に見直す、と決めておくと安心です。割増賃金の基礎から外す手当の範囲は、「割増賃金の基礎から除外できる手当」で整理しています。
③ 回数:宿直は週1回、日直は月1回まで
回数は、原則として宿直は1人につき週1回まで、日直は月1回までが目安です。人数が少なく当番を回しきれない事業場などで、勤務の負担が軽いと認められる場合には、これを超える回数が許可されることもあります。
少人数の会社では、同じ人に当番が集中しがちです。当番表を1か月分並べて、誰が何回入っているかを数えてみるだけで、見えてくるものがあります。
④ 睡眠設備:宿直なら相当の睡眠設備があるか
宿直では、相当の睡眠設備を用意することが求められます。事務所のソファで横になってもらう、という形は、この点で難しいことがあります。

影響:許可を受けても、残るもの・変わるもの
許可を受けると、宿直・日直の時間は、法定労働時間・休憩・休日の規制の対象から外れます。36協定の時間外労働の時間にも数えません。ただし、何もしなくてよくなるわけではありません。
| 項目 | 許可を受けた宿日直での扱い |
|---|---|
| 宿日直の時間そのもの | 労働時間・休憩・休日の規制の対象外(36協定の時間外にも数えない) |
| 宿日直手当 | 1回ごとに、1人1日平均額の3分の1以上を支払う |
| 当番中に通常の業務をした時間 | 本来の労働時間として扱い、割増賃金(時間外・深夜など)を支払う |
| 通常業務がたびたび起きる | 許可の前提が崩れるため、勤務体制の見直しが必要になる |
| 許可を受けていない当番 | 当番の時間は原則として労働時間。時間外・深夜・休日の割増の対象 |
とくに大事なのは3行目です。通達(昭和63年3月14日基発第150号)では、宿直中に突発的に通常の業務が発生した場合、その時間は本来の労働時間として、時間外労働や深夜業の割増賃金を支払う扱いが示されています。夜中に機械のトラブルで2時間修理にあたった、急な出荷対応を手伝った——そうした時間は、宿直手当とは別に計算します。
そのためには、当番の人が何時から何時まで、何をしたかを残しておく必要があります。宿直日誌に「対応内容」と「開始・終了時刻」の欄があるだけで、ずいぶん確認しやすくなります。
そして、こうした通常業務が常態化しているなら、それはもう「ほとんど労働する必要のない勤務」とはいえません。その場合は、宿直ではなく交替制の夜勤として、労働時間に組み込む形を考えるほうが自然です。
「うちの当番、許可が取れそうにないな」と感じたかもしれません。でも、それが分かれば、あとは当番の時間を労働時間として正しく数えるという、まっすぐな問題に変わります。どちらに進んでも、それは前進です。
明日やること(まずはここだけ)
一度に全部を整える必要はありません。明日できるのは、たぶんここまでです。
- 書庫やファイルで、宿日直の許可書があるかを探す。見つからなければ、所轄の労働基準監督署に許可の有無を問い合わせる。
- 当番の人に、当番中に実際にしていることを一度聞いてみる。巡視と電話番だけか、ふだんの仕事も入っているか。
- 当番表を1か月分並べて、1人あたりの回数を数える(宿直は週1回、日直は月1回が目安)。
- いまの宿日直手当の額と、「1人1日平均額の3分の1」を計算して比べる。
- 宿直日誌に、通常業務をしたときの内容と時刻を書く欄があるかを確認する。なければ足す。
今日は1と2だけでも十分です。「許可があるか」と「実際に何をしているか」が分かれば、次の一手はおのずと決まってきます。
チェックリスト(現場用:最低ライン→優先→代替→免除)
- 最低ライン(ここだけは必ず)
- 宿直・日直について、労働基準監督署の許可を受けているかを確認した
- 許可がない当番は、その時間を労働時間として扱い、割増賃金を計算している
- 当番中に通常の業務をした時間を、労働時間として記録し、割増賃金を支払っている
- 当番の勤務が、巡視・電話や文書の受付・非常時の待機など、ほとんど労働のない内容に収まっているかを確かめた
- 優先して確認(見落としやすいところ)
- 宿日直手当が、同種の労働者の1人1日平均額(割増賃金の基礎となる賃金で計算)の3分の1以上になっている
- 昇給のあとに、宿日直手当の額を見直すタイミングを決めている
- 1人あたりの回数が、宿直は週1回・日直は月1回の目安に収まっている(超えるなら許可の内容と照らし合わせた)
- 宿直に相当の睡眠設備(宿直室・寝具など)を用意している
- 宿直日誌に、対応内容と開始・終了時刻を書く欄がある
- 宿日直の勤務と手当について、就業規則・賃金規程に定めがある
- できないときの代替(暫定運用)
- 許可の基準を満たせそうにない → 当番の時間を労働時間として数え、時間外・深夜・休日の割増で精算する運用にする
- 通常業務が当番中によく入る → 宿直ではなく、交替制の夜勤としてシフトに組み込むことを検討する
- 夜間の対応自体を減らしたい → 機械警備や外部の警備会社への委託で足りないかを検討する
- 免除・簡略化の目安
- 夜間や休日に事業場で当番をする仕組みそのものがない会社は、この検討は不要
- 休日の当番が、自宅で電話を受けられるようにしておくだけの形なら、まずは「呼び出しがあったときの対応時間をどう数えるか」から整理すれば足りる
当番の仕組みは、たいてい誰かが善意で始めて、そのまま何年も続いてきたものです。だからこそ、いま見直そうとしているあなたは、前の担当者の仕事を責めているのではなく、当番をしてくれている人を守ろうとしているのだと思います。
許可の有無と、当番中に実際にしていること。今日はその2つが分かれば十分です。迷ったときは、ひとりで結論を出さずに、社会保険労務士や労働基準監督署に聞いて大丈夫。ひとつずつ確かめていきましょう。

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本記事は一般的な実務情報です。宿直・日直の許可の可否や手当の額は、勤務の実態・人数・事業場の設備、就業規則の定めによって判断が分かれます。医療機関など業種によっては、別に詳しい基準が示されている場合もあります。最終的な判断は、社会保険労務士・所轄の労働基準監督署など最新の公式情報でご確認ください。