夕方の事務所で、就業規則の休職の条文と卓上カレンダーを見比べながら、長く休んでいる社員のことを思って静かに考えているひとり労務担当者

休職期間満了で退職になるとき|私傷病の長期欠勤の扱いと手順

カレンダーを見て、ふと手が止まる。病気で休んでいるあの人の休職期間が、来月で終わる。 就業規則には「休職期間が満了しても復職できないときは、退職とする」と書いてある。でも、本当にこのまま「退職です」と伝えていいのだろうか。何か手続きを飛ばしていないか、本人はいまどんな気持ちでいるのか——ひとりで労務を回していると、規定の一文と目の前の人のあいだで、どう動けばいいのか迷ってしまいますよね。

先にお伝えしたいのは、休職期間の満了は「ある日突然、規定どおりに切る」ものではなく、満了の数か月前から本人と確かめ合いながら、順番に進めていくものだということです。満了日をあらかじめ伝え、復職できるかどうかを一緒に確かめ、それでも難しければ、退職後の生活の支えまで案内する。この流れを押さえておけば、会社にも本人にも、納得の残る形で区切りをつけやすくなります。

結論:私傷病(仕事が原因ではない病気やけが)による休職期間が満了しても復職できないとき、就業規則に「満了時は退職とする」定めがあれば、原則として退職(いわゆる自然退職)として扱えます。ただし、①満了日と復職の手続きを前もって本人に知らせる、②主治医の意見などをもとに、復職できるかを会社がていねいに確かめる、③業務が原因の病気やけがではないかを確認する、の3つを飛ばさないことが大切です。退職になるときは、傷病手当金の継続給付や健康保険の切り替えなど、その後の支えまで案内しておくと安心です。

進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。

  1. 就業規則の休職条文(期間・満了時の扱い・通算の定め)を確認し、満了日を確定させる
  2. 満了日のおよそ1〜2か月前に、本人へ満了日と復職の手続きを書面で知らせる
  3. 診断書や本人との面談をもとに、復職できるかを会社が判断する
  4. 復職できないときは、退職の手続きと、退職後に使える制度の案内をセットで行う

何が起きているか:「休職」は会社ごとのルールで動いている

まず押さえておきたいのは、私傷病の休職制度は、法律で設けることが義務づけられている制度ではないという点です。休職できる期間、休職中の給与、満了したときの扱いは、会社が就業規則などで決めたルールに沿って動きます。

休職とは:病気やけがなどで働けない社員について、雇用契約は続けたまま、一定期間仕事を免除する会社の制度です。いわば「すぐに辞めてもらうのではなく、回復を待つための猶予期間」です。

そのため、休職の定めがある会社は、就業規則にその内容を書いておく必要があり(労働基準法第89条。定めるなら書く「相対的記載事項」)、雇い入れのときに示す労働条件にも、休職に関する事項が含まれます(同法第15条、施行規則第5条)。

多くの会社では、次のような流れで定めています。

ここで見ておきたいのが、満了時の書き方です。「退職とする」と書いてあれば、期間満了という事実によって雇用契約が終わる扱い(自然退職)になります。一方で「解雇する」と書いてあれば、それは会社からの解雇なので、30日前の予告または解雇予告手当など、解雇の手続きが必要になります(労働基準法第20条)。同じ「満了」でも、規定の一文で必要な手続きが変わるので、まずは自社の条文を開いて確かめてみましょう。

具体例:満了日から逆算して、3つの段階で進める

休職期間満了に向けた流れを、満了日を知らせる場面、復職できるかを話し合って確かめる場面、退職後の制度を案内する場面の3つに分けて左から右に並べた図
「知らせる」「確かめる」「案内する」の3段階で、満了日から逆算して進めます

たとえば、10月1日から6か月の休職に入った社員がいるとします。規定で満了日は翌年3月31日。ここから逆算して、次の3つの段階で進めていきます。

段階1 満了日を確定させ、前もって知らせる(満了の1〜2か月前)

最初にやることは、満了日を正確に確かめることです。休職の起算日、期間の長さに加えて、規定に「同じ、または似た病気で再び休職したときは、前の休職期間と通算する」といった通算の定めがあるかも見ておきます。復職してすぐに再発した場合などは、この定めで満了日が変わることがあります。

満了日が確定したら、本人に書面で知らせます。伝える内容は次のとおりです。

「退職」という言葉を書くのは心苦しいかもしれません。でも、満了の直前になって初めて知らされるほうが、本人にとってはずっとつらいものです。早めに、事実を、やわらかく伝える。それ自体が、本人が自分の今後を考えるための時間を守ることにつながります。体調によっては本人が書面を読むのも負担になるので、事前に了承を得ていれば家族を連絡窓口にするなど、伝え方も工夫できます。

段階2 復職できるかを、会社がていねいに確かめる

本人から復職の希望が出たら、主治医の診断書をもとに、復職できるかどうかを会社が判断します。ここは現場でもいちばん迷いやすいところです。

もうひとつ、ここで必ず確かめたいのが、その病気やけがが、仕事が原因のものではないかという点です。長時間労働やハラスメントなど業務が原因と考えられる場合は、私傷病の休職ではなく労災の問題になり、療養のために休んでいる期間とその後30日間は、原則として解雇ができません(労働基準法第19条)。この場合、私傷病の規定どおりに「満了で退職」と進めるのは避け、社会保険労務士などの専門家に早めに相談してください。

段階3 復職できないときは、退職の手続きと「その後の支え」をセットで

話し合いを重ねても満了日までに復職が難しいときは、規定に沿って退職の手続きに進みます。退職日(多くは満了日。規定の書き方に合わせる)を本人と確認し、退職の通知を書面で渡します。

あわせて、退職後に使える制度を案内しておくと、本人の不安がぐっと軽くなります。

会社側の手続きは、通常の退職と同じです。健康保険・厚生年金の資格喪失届(退職日の翌日から5日以内)、雇用保険の資格喪失届と離職証明書(退職日の翌日から10日以内)、住民税の切り替え、源泉徴収票の交付などを進めます。離職理由は、事実のとおり「休職期間満了による退職」として記載し、内容を本人にも確認してもらいます。

影響:順番を飛ばすと、本人にも会社にも傷が残りやすい

休職期間の満了は、進め方しだいで、その後の受け止められ方が大きく変わります。

逆にいえば、「知らせる・確かめる・案内する」の3つを順番に踏んでおくだけで、たとえ退職という結果になっても、「最後まで誠実に向き合ってもらえた」と感じてもらえる区切り方に近づきます。

明日やること(まずはここだけ)

一度に全部そろえなくて大丈夫です。今日はここだけ確認できれば十分です。

  1. 就業規則の休職条文を開く:休職期間・満了時の扱い(「退職」か「解雇」か)・通算の定めがあるかを確認する。
  2. いま休職中の人の満了日を書き出す:起算日と期間から満了日を確かめ、1〜2か月前に連絡する日をカレンダーに入れておく。
  3. 満了の案内文のひな型を作る:満了日・復職の手続き・満了時の扱いの3点を、やわらかい言葉でまとめておく。

満了の扱いを規定に新しく加えたり、期間を短くしたりするのは、社員にとって不利益な変更になることがあるので、見直すときは慎重に進めてください。

チェックリスト(コピーして使えます)

よければ、こちらも

休職に入るときから復職までの全体の流れは「休職・復職支援の進め方」に、傷病手当金の申請そのものは「傷病手当金の申請手続き」にまとめています。退職のときの手続きは「退職手続きの流れ」「健康保険の資格喪失届」「雇用保険の資格取得・喪失届」、本人への健康保険の案内には「退職後の健康保険の選び方」が役立ちます。休職規定を見直すときは「就業規則の不利益変更」もあわせてどうぞ。業務が原因かもしれないときは「労災の療養・休業補償の請求」を確認してみてください。印刷して使えるチェックリストは無料ツールに、ほかの記事は記事一覧にあります。

朝の明るい事務所で、休職の段取りを整理し終えた労務担当者が、窓の外の晴れた空を見ながら穏やかに一息ついている様子
規定の一文の向こうにいる人を思って動いたこと。それは、ちゃんと届きます

休職期間の満了は、労務の仕事のなかでも、いちばん気持ちが重くなる場面のひとつかもしれません。でも、規定の一文で終わらせずに、満了日を早めに伝え、戻れる道を一緒に探し、退職後の支えまで案内する——その一つひとつが、休んでいる人にとっては「この会社は最後まで向き合ってくれた」という記憶になります。今日、休職の条文を開いて満了日を書き出しただけでも、もう十分に前に進んでいます。迷ったときは、ひとりで決めずに専門家を頼ってくださいね。


本記事は一般的な実務情報です。休職・自然退職の扱いや傷病手当金・雇用保険の取扱いは、就業規則の定め、個別の事情、法改正、加入する健康保険によって変わります。とくに復職の可否や業務起因性の判断は、争いになりやすい場面です。最終的な判断は、社会保険労務士・弁護士・産業医や、所轄の年金事務所/労働基準監督署/ハローワークなど最新の公式情報でご確認ください。