
雇用保険の資格取得届・喪失届|書き方と提出期限の手引き
「入った人の雇用保険、いつまでに出すんだっけ」。 新しい人を迎えた朝、社会保険の手続きに気を取られて、雇用保険の届出がふっと後回しになる——ひとりで労務を回していると、よくあることだと思います。しかも雇用保険は、社会保険と提出先も期限も違うので、「あれ、これは何日以内だっけ」と毎回カレンダーを数え直していませんか。
まずお伝えしたいのは、雇用保険の届出は「入るとき」と「辞めるとき」の2枚を、それぞれの期限だけ押さえれば大丈夫ということです。書く欄は多くなく、判断が要るのはほんの数か所。社会保険の資格取得届に比べると、むしろシンプルです。 この記事では、提出先・期限の違いから、書き方、離職票の要否、迷いやすい点、明日できる準備まで、ひとり労務の目線で一つずつ整理していきます。
結論:雇用保険の届出はハローワーク(公共職業安定所)に出します。資格取得届(雇用保険被保険者資格取得届)は、雇い入れた日の属する月の翌月10日まで。資格喪失届(雇用保険被保険者資格喪失届)は、資格喪失日(離職日の翌日)から起算して10日以内が期限です。社会保険(年金事務所・5日以内)とは提出先も期限も別物なので、セットで覚えないのがコツ。判断が要るのは主に、加入要件(週の所定労働時間20時間以上+31日以上の雇用見込み)に該当するかと、辞めるときに離職票を交付するか(=離職証明書を添えるか)の2点です。迷ったら、まず本人の雇用保険被保険者証で被保険者番号を確認するところから始めれば大丈夫です。
進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。
- 加入要件(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)に該当するかを確認する
- 本人の雇用保険被保険者証で被保険者番号を確認する(前職があれば持参を依頼)
- 入るとき=資格取得届を「翌月10日まで」に提出する
- 辞めるとき=資格喪失届を「離職日の翌日から10日以内」に提出する(離職票が要るなら離職証明書を添える)
まずはここを確認:雇用保険の加入要件

加入要件から外れていると、そもそも届出は不要(または受け付けられません)。入社連絡を受けたら、ここを先にチェック。
- 週の所定労働時間が20時間以上あること
- 31日以上引き続き雇用される見込みがあること(雇用契約に更新規定がある、同様の人が更新されている等を含む)
- この2つを両方満たすと、原則として雇用保険の被保険者になります(パート・アルバイトでも該当すれば加入対象)
- 昼間部の学生は原則として適用除外など、いくつか例外があります。最新の基準・適用除外は公式情報(ハローワーク・厚生労働省)で確認してください
該当しない場合、今回は雇用保険の資格取得届は不要です。迷ったら管轄のハローワークや社労士に確認を。
社会保険(健康保険・厚生年金)とは加入の入口が別です。週20時間前後の短時間の人は「雇用保険は入るが社会保険は対象外」といったズレも起こります。両方を別々に判定する、と考えておくと混乱しません。
何が起きているか:社会保険と「別の窓口・別の期限」だから迷う
雇用保険の届出が地味に面倒に感じるのは、書く量が多いからではなく、社会保険とセットで手が動くのに、行き先も締め切りも違うからです。同じ「入社手続き」の一連の流れなのに、頭の中で2つの締め切りを切り替えないといけない。ここを一度整理しておくと、迷いがぐっと減ります。
- 提出先が違う…社会保険は年金事務所、雇用保険はハローワーク
- 期限が違う…社会保険の資格取得届は5日以内、雇用保険は翌月10日まで
- 辞めるときの一手間…雇用保険は喪失届に加えて、離職票が要るなら離職証明書も出す
つまり、判断のポイントは「加入要件に当てはまるか」と「辞めるとき離職票を出すか」の2つだけ。ここさえ押さえれば、残りは本人の書類を見て写していく作業です。
提出期限と提出先:取得と喪失で早見表にする
入るときと辞めるときで、期限も添付も変わります。まとめて見比べられるように、早見表にしました。
| 項目 | 資格取得届(入るとき) | 資格喪失届(辞めるとき) |
|---|---|---|
| 正式名称 | 雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険被保険者資格喪失届 |
| 提出先 | 管轄のハローワーク(公共職業安定所) | 管轄のハローワーク(公共職業安定所) |
| 提出期限 | 雇い入れた日の属する月の翌月10日まで | 資格喪失日(離職日の翌日)から起算して10日以内 |
| 主な添付 | 原則不要(マイナンバー・被保険者番号を記載)。過去に加入歴があれば被保険者証で番号確認 | 離職票を交付する場合は離職証明書を添付。賃金台帳・出勤簿など離職理由・賃金の確認資料 |
| 提出方法 | 電子申請(e-Gov・GビズID)/窓口/郵送 | 電子申請(e-Gov・GビズID)/窓口/郵送 |
| 受け取る控え | 雇用保険被保険者証・資格取得等確認通知書 | 資格喪失確認通知書・離職票(交付時) |
社会保険(資格取得届は5日以内)と比べると、雇用保険の取得は少し余裕があります。ただし「翌月10日まで」を過ぎると遡って提出することになり、本人の失業給付などに影響することもあるので、入社月のうちに出すくらいの気持ちでいると安心です。
資格取得届の書き方:写す欄と、確認する欄
雇用保険の資格取得届も、多くの欄は本人の書類から写すだけです。判断が要るのはわずかです。
本人の書類・情報から写す欄
| 欄 | 何を書くか | 確認のもと |
|---|---|---|
| 被保険者番号 | 前職で加入歴があれば記入 | 雇用保険被保険者証 |
| 個人番号(マイナンバー) | 本人のマイナンバー | 通知カード・マイナンバーカード |
| 氏名・フリガナ・生年月日・性別 | 本人確認書類どおり | 本人確認書類 |
| 資格取得年月日 | 雇い入れた日 | 雇用契約書 |
| 賃金(支払の態様・賃金月額) | 月給・時給などの区分と見込み額 | 雇用契約書・賃金規程 |
| 被保険者となったことの原因 | 新規雇用・日雇からの切替 等の区分 | 雇用の実態 |
| 職種・週所定労働時間・雇用形態 | 契約内容どおり | 雇用契約書 |
- 被保険者番号がいちばん確認したい欄です。前職がある人は、原則として被保険者番号が引き継がれます。入社前に「雇用保険被保険者証を持ってきてください」と一言添えておくと、当日つまずきません。
- 番号がどうしてもわからないときは、マイナンバーで届出できます。ハローワーク側で過去の番号と結びつけてくれるので、空欄のまま止まらなくて大丈夫です(新卒など初めて加入する人は、番号なしで新規に付番されます)。
資格喪失届と離職票:ここだけ判断が要る

辞めるときは、資格喪失届に「離職票を交付するかどうか」という判断が一つ加わります。ここだけ押さえれば、あとは日付を書くだけです。
- 離職票が要るかを本人に確認する:退職者が失業給付(基本手当)を受けるなら離職票が必要です。転職先が決まっている人でも「念のため欲しい」と言われることがあります。本人が交付を希望するときは、資格喪失届に離職証明書を添えて提出します。
- 59歳以上は本人の希望にかかわらず離職票が必要です。高年齢雇用継続給付などの判定に使うため、忘れずに交付します。
- 離職理由は正確に:自己都合か会社都合か等の離職理由は、本人の給付日数や給付制限に直接関わります。事実に沿って記入し、離職証明書には本人の署名・確認を受けます(賃金の記載は賃金台帳・出勤簿で裏づけます)。
- 迷ったら、基本は離職票を交付する前提で用意しておくと、後から「やっぱり必要でした」と慌てずに済みます。
迷いやすいポイント:番号・期限・離職理由
実務でつまずきやすいのは、次のようなケースです。先に知っておくと、その場で慌てずに済みます。
- 前職の被保険者番号がわからない:マイナンバーで届出可能です。番号が出るのを待って提出を遅らせなくて大丈夫。
- 社会保険の期限(5日以内)と混同する:雇用保険の取得は翌月10日まで。行き先も年金事務所ではなくハローワークです。
- 短時間の人の扱い:週20時間以上+31日以上の雇用見込みを両方満たすかで判定します。社会保険の加入可否とは別に考えます。
- 離職票を「不要」と言われた:後日「やっぱり必要」となることもあります。59歳以上は必須、それ以外も念のため用意しておくと安心です。
- 離職理由で本人ともめそう:会社の認識と本人の主張が違うときは、事実(賃金台帳・出勤簿・経緯メモ)で確認し、離職証明書の本人確認欄で意思表示してもらいます。
どれも、原則を押さえて、迷う部分だけ確認する——その姿勢で十分、丁寧な手続きになります。
影響:1枚の遅れが「本人の給付」に響く
雇用保険の届出の遅れや誤りは、本人のお金にそのまま響きます。
- 資格取得届が遅れる → 加入期間の確認が遅れ、後の失業給付や育児休業給付の判定でつまずくことがある
- 資格喪失届・離職票が遅れる → 退職者がハローワークで失業給付の手続きを始められず、生活面で困ることがある
- 離職理由を誤る → 給付制限の有無や給付日数が変わり、あとから訂正・トラブルになることがある
「入るとき翌月10日まで/辞めるとき10日以内」——この2つの期限を、入退社の連絡が来た時点でカレンダーに書き込む。それだけで多くのつまずきを防げます。
明日やること(まずはここだけ)
次の入退社をいきなり完璧にこなそうとしなくて大丈夫です。今日できる小さな準備から始めましょう。
- 番号・書類の依頼テンプレを用意:入社者へ「雇用保険被保険者証(前職の被保険者番号がわかるもの)を持参ください。なければマイナンバーで手続きします」と送れる案内文を作る。
- 入退社の期限メモを1枚作る:「雇用保険=ハローワーク/取得は翌月10日まで・喪失は10日以内」と、社会保険(年金事務所・5日以内)と並べて貼っておく。
- 離職票の確認を退職面談の項目に入れる:退職の申し出を受けたら「離職票は必要ですか(59歳以上は必ず交付)」と聞く一行を、面談メモに足しておく。
この3つを先に整えておくだけで、次に人が入るとき・辞めるときの雇用保険手続きが、ぐっと軽くなります。
チェックリスト(現場で回る最低ラインつき)
「まずはこれだけ」で出せる最低ラインと、できればやる追加確認、間に合わないときの代替を並べました。状況に合わせて使い分けてください。
- 必須(最低ライン・優先順)
- 加入要件(週20時間以上+31日以上の雇用見込み)に該当するか確認(最新基準は公式で確認)
- 入るとき:本人の被保険者番号を確認(不明ならマイナンバーで届出)
- 入るとき:資格取得届を雇入れ月の翌月10日までにハローワークへ提出
- 辞めるとき:資格喪失届を離職日の翌日から10日以内に提出
- 辞めるとき:離職票の要否を本人に確認(59歳以上は必ず交付)
- できれば(精度アップ)
- 離職証明書の賃金・離職理由を賃金台帳・出勤簿で裏づけ、本人確認を受ける
- 社会保険(年金事務所・5日以内)と提出先・期限を取り違えていないか最終確認
- 電子申請(e-Gov・GビズID)の準備を済ませ、控え(通知書)の保管場所を決める
- 間に合わない・不明なときの代替
- 被保険者番号が出ない→マイナンバーで先に提出
- 離職票が要るか迷う→交付する前提で離職証明書を用意
- 期限を過ぎた→気づいた時点で即提出(遅延理由の説明を求められることがある)
- 備考
- 加入要件に該当しない場合は資格取得届は不要(最新の適用基準は公式で確認)
よければ、こちらも
雇用保険と地続きの話として、人が入るときの段取り全体をまとめた「入社手続きの必要書類と集める順番」、退職時に逆向きで必要になる「退職手続きの流れ(離職票・資格喪失・源泉徴収票)」、そして社会保険側の入口・出口である「資格取得届の書き方と提出期限」「資格喪失届の提出期限と退職日との関係」もあわせて読むと、入退社の手続きが一本の線でつながって見えてきます。1年の提出物を見渡したいときは「ひとり労務の年間スケジュール」もどうぞ(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、入退社の段取りづくりに役立ててください。

雇用保険の届出は、社会保険と一緒に手が動くぶん、「行き先も期限も同じ」と思い込んで混乱しがちです。でも、今日「取得は翌月10日まで・喪失は10日以内、どちらもハローワーク」という軸が持てたなら、もう迷いの大半は消えています。一度作った案内文と期限メモは、次に人が入るとき・辞めるときのあなたを、きっと助けてくれます。新しい仲間の入り口と、旅立つ人の出口を、一つずつ整えていきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。雇用保険の取扱いは、個別の事情や法改正によって変わります。加入要件(週所定労働時間・雇用見込み)・提出期限・離職票の要否・離職理由の判断など最新の要件は、ハローワーク(公共職業安定所)・厚生労働省の公式情報でご確認のうえ、最終的な判断は社会保険労務士・管轄のハローワークなど最新の公式情報でご確認ください。