
遅刻・無断欠勤を繰り返す社員への対応手順|当日の連絡から指導まで
始業から1時間。〇〇さんの席は空いたまま、電話をかけても呼び出し音が鳴るだけ。先月も何度か遅刻があって、上司からは「また? 労務のほうでなんとかしてよ」と言われる——。腹が立つ気持ちと、何かあったんじゃないかという心配が、同時にわいてきますよね。
遅刻や無断欠勤は、ひとり労務の担当者にとって「いつ起きるか分からない」困りごとです。給与の計算はどうするのか、どこまで連絡すればいいのか、何度も続くときにどう話せばいいのか。迷う場面がいくつも重なります。
先にお伝えしたいのは、無断欠勤の対応は「責めること」ではなく「確かめること」から始まるということ。順番さえ決めておけば、当日あわてずにすみます。一緒に整理していきましょう。
結論:無断欠勤が起きた日は、まず①本人に連絡 → ②つながらなければ緊急連絡先へ → ③連絡の経過を記録し、出社してきたら④理由を聞くところから始めます。給与は、働かなかった時間・日の分を就業規則(賃金規程)の定めに沿って控除するのが基本で、それを超えて罰として差し引く場合は「減給の制裁」として労働基準法第91条の上限があります。遅刻や欠勤が続くときは、体調・家庭の事情・業務量などの原因を先に確かめ、そのうえで口頭注意 → 書面指導 → 改善の確認と段階を踏みます。懲戒や解雇は、こうした経過を記録にそろえてから、専門家と一緒に考える最後の手段です。まずは「欠勤・遅刻の連絡は、誰に・いつまでに・何で」を社内で1行のルールにするところから始めれば十分です。
進める順番は、これだけです。
- 当日:連絡と安否確認、その経過を時刻つきで記録する
- 出社後:責める前に、理由を聞く
- 続くとき:原因を確かめてから、段階を踏んで指導する
何が起きているか:「無断」の裏に、言えない事情があることも
遅刻や無断欠勤が続くとき、職場ではこんな状態になりがちです。
- 上司や同僚が「またか」と受け止め、いつ・何回あったのか、正確には誰も数えていない
- 本人に注意はしているが、なぜ遅れるのかは聞いていない
- 周りの不満が積もって、ある日急に「もう辞めてもらえないか」という話が出てくる
ここで見落としやすいのが、無断欠勤の裏にある事情です。寝坊や気のゆるみに見えても、実際には体調やメンタルの不調、家族の介護や子どもの送り迎え、通勤の事情、業務量の偏りが隠れていることがあります。とくに、それまできちんと来ていた人の遅刻が急に増えたときは、気持ちの不調のサインのこともあります。
体調の不調が理由とうかがえる欠勤について、受診の勧めや休職などの対応を考えないまま処分に進むと、後から処分が認められないことがあります(精神的な不調が疑われる社員の欠勤に対し、そうした対応を検討せずに行った処分を無効とした最高裁 平成24年4月27日判決があります)。会社には、従業員が安全に働けるよう配慮する義務もあります(労働契約法第5条)。だからこそ、最初の一手は「確かめる」なのです。
当日の動き:連絡・安否確認・記録の順で
無断欠勤が起きた日の動きを、順番に並べました。

① 本人に連絡する(始業から30分〜1時間を目安に) 電話がつながらなければ、メールや社内チャットにも「無事かどうかだけでも教えてください」と短く送ります。最初の連絡は、責める言葉を入れずに安否を気づかう言葉にしておくと、本人も返事をしやすくなります。
② つながらなければ、緊急連絡先へ 入社時に預かっている緊急連絡先(家族など)に連絡します。ひとり暮らしで誰とも連絡がつかず、心配な状況が続くときは、上司と2人で自宅を訪ねる、必要に応じて警察に相談する、といった対応も選択肢になります。ひとりで抱えず、上司や社長と相談して決めましょう。
③ 連絡の経過を、時刻つきで記録する 「何時に・誰が・どの手段で・どうなったか」をメモします。たとえば「9:40 上司が本人携帯に電話、応答なし」「10:00 メール送信」「10:30 緊急連絡先(母)に電話、本人は自宅で体調不良と判明」のように。後から振り返るとき、この記録がいちばん役に立ちます。
④ 出社したら、まず理由を聞く 「心配しました。何があったか聞かせてもらえますか」と、責める前に事情を聞きます。そのうえで「連絡がないと、無事かどうか分からなくて困るんです」と、会社が困った事実を落ち着いて伝えます。
給与の扱い:控除と「減給の制裁」は別もの
給与計算の担当として迷いやすいのが、遅刻・欠勤の扱いです。ここは2つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | どういうものか | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 欠勤・遅刻の控除 | 働かなかった日・時間の分を、賃金から差し引く(ノーワーク・ノーペイ) | 計算方法を就業規則(賃金規程)に定め、その通りに計算する |
| 減給の制裁 | 罰として、働かなかった分を超えて差し引く | 就業規則の根拠が必要。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1まで(労働基準法第91条) |
たとえば、10分の遅刻に30分ぶんを差し引くと、20分ぶんは「罰」として差し引いたことになり、減給の制裁の扱いになります。平均賃金が1日1万円の人なら、制裁として差し引けるのは1回あたり5,000円まで。月給25万円の人なら、その月の制裁の合計は2万5,000円までです。
また、本人から「無断欠勤した日を有給休暇にしてほしい」と言われることがあります。有給休暇は事前に申し出るのが原則なので、後から振り替えるかどうかは会社が判断してよい部分です。認める・認めない、病気のときだけ認める、など扱いを就業規則で決めておくと、人によって対応がぶれません。
控除の具体的な計算は「欠勤・遅刻早退控除の計算」で、1時間あたりの単価の出し方は「月平均所定労働時間」で整理しています。
具体例:遅刻が続き、無断欠勤も出たBさん
入社3年目のBさん。9月に入ってから、遅刻が3回(9/8・9/15・9/24)、無断欠勤が1回ありました。
記録を「事実」でそろえる まずは勤怠の記録から、いつ・何分の遅刻だったかを確認します。「最近たるんでいる」ではなく、「9月は遅刻3回(各15〜40分)、無断欠勤1回」と、数えられる形にしておきます。
理由を聞く 上司と労務の2人で、会議スペースで15分ほど。
「9月に入って遅れる日が何回かあって、気になっていました。何か困っていることはないですか」
話を聞くと、Bさんは「夏から父の通院の付き添いが増えて、朝が回らなくなっていた。言い出しにくかった」とのこと。ここで分かったのは、「だらしなさ」ではなく家族の介護という事情でした。
会社側でできることを一緒に探す この場合は、始業時刻の繰り下げや時差出勤、介護休暇・介護休業の制度など、使える仕組みがないかを一緒に確認します。そのうえで「遅れるときは、始業前に上司へ一言連絡を」と、次からのルールを短く伝えて、面談の内容を記録します。
もし理由を聞いても特別な事情が見当たらず、その後も続くときは、口頭注意から書面指導へと段階を進めます。進め方と記録の6項目は「問題社員への注意・指導と記録の残し方」に詳しくまとめています。
影響:長く連絡がつかないとき、懲戒を考えるとき
多くの場合、連絡が取れて事情を聞けば、対応は前に進みます。ただ、まれに「何日たっても連絡がつかない」「指導を重ねても改善しない」こともあります。その場合に知っておきたいことを整理しました。
- 連絡がつかない状態が続く:就業規則に「行方不明で〇日以上連絡が取れない場合は退職とする」といった定めがあるかを確認します。定めがない場合や、解雇を考える場合は、本人に意思表示が届く必要があるなど手続きが複雑になるため、早めに社会保険労務士・弁護士に相談します。
- すぐに解雇できるわけではない:「2週間以上の無断欠勤で即時解雇できる」と聞くことがありますが、これは解雇予告手当を払わずに解雇するときに、労働基準監督署の認定(解雇予告除外認定)を受ける際の目安のひとつです。出勤を促しても応じない、といった事情も含めて判断され、自動的に解雇が認められるものではありません(労働基準法第20条)。
- 懲戒は最後の手段:懲戒や解雇には、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が求められます(労働契約法第15条・第16条)。連絡・確認・指導の記録がそろっていることが、まず大前提です。手順は「懲戒処分の進め方」で確認できます。
ここまで読むと少し身構えてしまうかもしれませんが、実際に必要になるのは、当日の連絡と記録、そして理由を聞くことがほとんどです。それができていれば、どの方向に進むことになっても困りません。
明日やること(まずはここだけ)
いま困っている人がいてもいなくても、準備しておけることを3つ。
- 就業規則の「欠勤・遅刻の手続き」の条文を開いてみる:連絡の期限や方法、無断欠勤の扱い、有給休暇への振替の扱いが書かれているかを確認します。
- 「欠勤・遅刻の連絡ルール」を1行にして伝える:「遅れる・休むときは、始業時刻までに上司へ電話かチャットで連絡」など。全員に周知すれば、「無断」かどうかの線もはっきりします。
- 緊急連絡先が最新か確かめる:入社時から変わっていない人がいないか、名簿を一度だけ見直します。
3つのうち、1つだけでも十分です。条文を1つ開いたなら、それでもう準備は始まっています。
チェックリスト(現場で回る最低ラインつき)
- 必須(最低ライン・優先順)
- 無断欠勤の日、まず本人に連絡し、つながらなければ緊急連絡先に連絡した
- 連絡の経過を「時刻・誰が・手段・結果」で記録した
- 出社後、責める前に理由を聞いた
- 欠勤・遅刻の控除は、就業規則(賃金規程)の計算方法どおりにしている
- 働かなかった分を超えて差し引いていない(差し引くなら減給の制裁の上限内で、就業規則に根拠がある)
- できれば(精度アップ)
- 遅刻・欠勤の回数と日付を、勤怠記録で数えられる形にそろえている
- 体調・家庭の事情・業務量など、会社側で調整できる原因がないか確かめた
- 体調の不調がうかがえるときは、受診の勧めや産業医への相談を先に検討した
- 「欠勤・遅刻の連絡ルール」を全員に周知している
- 無断欠勤日の有給休暇への振替の扱いを就業規則で決めている
- 続くとき・長引くとき
- 口頭注意 → 書面指導 → 改善の確認と、段階を踏んで記録している
- 連絡がつかない状態が続く場合の、就業規則の定めを確認した
- 懲戒・解雇・退職の扱いを決める前に、社会保険労務士・弁護士に相談した
- 間に合わないときの代替
- 決まった記録様式がない → メール下書きやメモ帳に時刻つきで書き、日付を入れて保存する
- 過去の遅刻を数えていない → 勤怠システムやタイムカードから直近3か月分を拾い出す
- 話を聞くのが不安 → 上司に話してもらい、労務は同席して記録する役に回る
よければ、こちらも
注意・指導の段階と記録の書き方は「問題社員への注意・指導と記録の残し方」、指導を重ねても改善しないときは「懲戒処分の進め方」にまとめています。給与の計算は「欠勤・遅刻早退控除の計算」、体調の不調で休みが続くときは「傷病手当金の申請」、家族の介護が理由のときは「介護休業給付金の申請」や「育児・介護休業規程」も参考になります。こじれそうなときは「労使トラブルの初動対応」もどうぞ(記事一覧、無料チェックリスト)。
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遅刻や無断欠勤が続くと、つい「どう注意しよう」から考えてしまいます。でも、本当に最初に必要なのは、無事かどうかを確かめて、理由を聞くこと。そこから見えてくる事情は、思っていたより多いものです。
全部を一度に整えなくて大丈夫。今日は、就業規則の欠勤の条文を1つ開くだけで十分です。空いた席に気づいて電話をかけるあなたの仕事は、その人の毎日と、職場の安心を静かに支えています。
本記事は一般的な実務情報です。遅刻・欠勤の扱いや、懲戒・解雇・退職の可否は、就業規則の定め・本人の事情・これまでの経緯によって変わります。処分や退職に関わる判断をする前には、社会保険労務士・弁護士、所轄の労働基準監督署・総合労働相談コーナーなど最新の公式情報でご確認ください。