
育児・介護休業規程の整備ポイント|2025年改正の反映をひとり労務目線で
「育児・介護休業規程、たしか作ったはず……でも、いつ作ったっけ」。 就業規則まわりを見直していて、ふとそんな不安がよぎることはありませんか。育児・介護休業の分野は、ここ数年で何度も法改正があった領域です。とくに2025年には大きな改正が段階的に施行され、多くの会社で規程の見直しが必要になりました。数年前のひな形のまま、あるいはネットで拾った古い規定例のままだと、知らないうちに実態と法律がずれてしまう——ひとり労務の立場では、ここがいちばん気がかりなところですよね。
まずお伝えしたいのは、全部を一から作り直す必要はないということです。育児・介護休業の規程は、厚生労働省が「規定例(モデル規程)」を公開してくれています。やることは、その最新版と自社の規程を見比べて、変わったところを反映するだけ。ゼロから条文を考えるのではなく、「今の規程を最新に合わせる」と考えれば、ぐっと気持ちが軽くなります。 この記事では、育児・介護休業規程をどんな手順で整えればいいか、そして2025年改正で押さえておきたい変更点を、ひとり労務の目線で順番に整理していきます。
結論:育児・介護休業は法律で保障された従業員の権利なので、規程が古いままだと従業員の不利益や法違反につながりかねません。整備の基本は、①今の自社規程がいつのものかを確認 → ②厚生労働省の最新の「規定例」を入手 → ③2025年改正など変わった点を自社規程に反映 → ④過半数代表の意見を聴いて労働基準監督署に届け出て、全員に周知する、という流れです。内容が細かくボリュームも大きいため、就業規則本体に書き込むより「育児・介護休業規程」として別規程に切り出すのが一般的。ただし別規程でも就業規則の一部なので、変更時は意見聴取・届出・周知(労働基準法89条・90条・106条)が必要です。2025年は4月と10月に分けて大きな改正が施行済みで、子の看護休暇の見直し、残業免除の対象拡大、柔軟な働き方の措置の義務化などが入りました。制度は今も動いている分野なので、細かい要件は必ずそのときの厚生労働省の公式情報で確認しながら進めてください。
進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。
- 今ある育児・介護休業規程がいつ作った・直したものかを確認する
- 厚生労働省の最新の「規定例」をダウンロードして、手元に用意する
- 自社規程と規定例を見比べ、変わった点(とくに2025年改正)を反映する
- 過半数代表の意見を聴き → 労基署に届け出て → 全員に周知する
何が起きているか:育児・介護休業は「改正が続く」分野
育児・介護休業規程で手が止まるのは、あなたの準備不足のせいではありません。この分野が、労務の中でもとくに法改正の多い領域だからです。
少子化や介護離職への対応として、育児・介護休業法はほぼ毎年のように見直されてきました。数年前に整えた規程でも、その後の改正で「もう最新ではない」状態になっていることは珍しくありません。とくに直近では、2025年4月1日と2025年10月1日の2段階で、内容の大きい改正が施行されました。つまり、2024年以前のひな形のままだと、今の法律とずれている可能性が高い、ということです。
- なぜ古くなるか:制度そのものが頻繁に変わるため、一度作った規程はすぐに「過去のもの」になりやすい
- なぜ危ないか:育児・介護休業は従業員の権利なので、規程が古いと本来取れる休業・措置が使えず、不利益や法違反につながりうる
- どうすればいいか:ネットの古い情報ではなく、厚生労働省が公開している最新の「規定例」を土台にする
ここで安心してほしいのは、厚生労働省がそのまま使える規定例(モデル規程)を無料で公開していることです。自分で条文を組み立てる必要はなく、最新の規定例をベースに、自社の実態(従業員数や勤務形態)に合わせて調整すればよいのです。次の章から、その具体的な手順を見ていきます。
ステップ①:今の規程が「いつのものか」を確認する

最初にやるのは、今ある規程が「いつのものか」を確かめることです。ここが出発点になります。
- 規程の表紙や末尾にある制定日・改定日を見る(「最終改定 20XX年X月」など)
- 育児・介護休業を、就業規則本体に書いているか、別規程にしているかを確認する
- 直近で見直した記憶があるか、そのとき何を直したかをたどる
改定日が2025年より前なら、後述の2025年改正が反映されていない可能性が高いので、見直しの対象です。もし「そもそも規程があるか分からない」「口頭のルールで回してきた」という場合でも、慌てなくて大丈夫。この機会に、最新の規定例をベースに一本整えれば、それがそのまま最新版になります。
なお、育児・介護休業の定めは就業規則の絶対的記載事項である「休暇」に含まれます。内容が多く改正も多いため、実務では就業規則本体に全部書き込むのではなく、「育児・介護休業規程」として別に切り出すのが一般的です。別規程にしておくと、次に改正があったときも、その規程だけを見直せばよくなります。規程を分けるときの考え方は「社内規程は何から作る?ひとり労務のための整備の優先順位」でも整理しています。
ステップ②:厚生労働省の「最新の規定例」を手に入れる
自社の状況を把握したら、次は土台になる最新の規定例を用意します。ここが整備のいちばんの近道です。
厚生労働省は、育児・介護休業法にもとづく「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を公開しています。これは、法律の内容を反映したモデル規程で、条文の形でそのまま参考にできます。会社の規模や制度に応じて、簡易版(小規模事業所向け)が用意されていることもあります。
- 厚生労働省のサイトで「育児・介護休業 規定例」を探し、最新版をダウンロードする
- 「いつ時点の改正に対応しているか」を確認する(2025年改正対応かどうか)
- 自社の従業員数や勤務形態に近い版(通常版/簡易版)を選ぶ
大切なのは、必ず最新版を使うことです。検索で上位に出てくるPDFや解説記事が、数年前の内容のままということもあります。「いつ時点のものか」を確かめてから使うと安心です。ここで手に入れた規定例が、次のステップで自社規程と見比べる「答え合わせの基準」になります。
ステップ③:2025年改正で押さえておきたい主な変更点
最新の規定例が用意できたら、自社規程と見比べて、変わったところを反映していきます。2025年に施行された改正のうち、多くの会社に関係する主な変更点を整理します。ここは概要です。適用範囲や細かい要件は会社によって異なるので、必ず厚生労働省の最新情報で確認しながら進めてください。
2025年4月1日に施行された主なもの
- 子の看護休暇の見直し:名称が「子の看護等休暇」に変わり、対象となる子の範囲や、取得できる事由(感染症に伴う学級閉鎖、入園・卒園の行事など)が広がりました。
- 残業免除(所定外労働の制限)の対象拡大:これまで「3歳未満の子」を養育する人が対象でしたが、小学校就学前の子を養育する人まで請求できるようになりました。
- 育児のためのテレワーク:3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選べるようにする措置が、努力義務として求められるようになりました。
- 介護離職を防ぐための対応:介護に直面した従業員への個別の周知・意向確認や、早い段階での情報提供、相談体制の整備などが求められるようになりました。
2025年10月1日に施行された主なもの
- 柔軟な働き方を実現するための措置:3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に向けて、事業主が「始業時刻等の変更」「テレワーク」「短時間勤務」「両立支援の休暇」などの選択肢の中から複数を用意し、労働者が選べるようにすることが求められるようになりました。
- 個別の周知・意向確認:子が3歳になる前の適切な時期に、こうした柔軟な働き方の措置について、従業員一人ひとりに知らせ、意向を確かめることが求められます。
これらは、規程の条文だけでなく、日々の運用(個別の声かけや意向確認)にもかかわるのが特徴です。規程を直すのと同時に、「誰に、いつ、何を案内するか」という段取りも一緒に考えておくと、抜けが起きにくくなります。自社が対象になるか、どの措置を選ぶかは会社ごとの判断になるため、迷うところは社会保険労務士や労働局の窓口に相談すると確実です。
影響:規程が古いままだと、権利が「使えない」ことがある
育児・介護休業規程を最新にしておくことは、単なる書類の整備ではありません。従業員が本来受けられる権利を、実際に使えるようにすることにつながります。
- 規程が古いと:法改正で新しく認められた休暇や措置が規程に載っておらず、従業員が「制度がない」と思って利用をあきらめてしまうことがある。
- 個別周知・意向確認をしていないと:制度はあっても、対象の従業員に届かず、結果として使われないまま終わってしまう。
- 届出・周知が抜けていると:規程を直しても、労働基準監督署への届出や社内周知をしていないと、手続き上の義務を果たしていないことになる。
逆にいえば、規程を最新に保ち、対象者にきちんと案内できていれば、従業員は安心して休業や両立支援を使え、会社は「両立を支える職場」として信頼を得られます。ここは、ひとり労務の仕事が静かに人の暮らしを支えている場面です。なお、育児休業中の社会保険料の扱いは規程とは別のテーマなので、「産前産後・育児休業中の社会保険料免除の手続き」で整理しています。
ステップ④:意見を聴いて、届け出て、周知する
規程を最新に直したら、最後は手続きを通します。育児・介護休業規程は別規程でも就業規則の一部なので、変更したときは就業規則と同じ3ステップが必要です。
- 過半数代表の意見を聴く:労働者の過半数代表者(過半数労働組合があればその組合)から、変更内容について意見を聴き、意見書をもらう。求められているのは「意見を聴く」ことで、同意までは不要です。
- 労働基準監督署に届け出る:変更後の規程と意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に届け出る(e-Govでの電子申請も可)。
- 全員に周知する:掲示・備え付け・書面交付・社内ネットワークでの共有などで、全員が見られる状態にする。
この手順の詳しい進め方は「就業規則を変更したときの届出と周知の手順」にまとめています。育児・介護休業規程の見直しも、基本はこれと同じ流れで進められます。
明日やること(まずはここだけ)
規程の整備を、一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。今日は、次の3つから始めてみましょう。
- 今の規程の「改定日」を確認する:育児・介護休業の定めが、就業規則本体か別規程か、最後に直したのがいつかを見る。2025年より前なら見直し対象です。
- 厚生労働省の最新の規定例をダウンロードする:「育児・介護休業 規定例」で検索し、最新版(2025年改正対応)を手元に用意する。
- 見比べて、大きな差だけメモする:自社規程と規定例を並べて、明らかに違うところ(子の看護等休暇、残業免除の対象、柔軟な働き方の措置など)に印をつける。
この3つが済めば、あとは差を埋めて、意見を聴いて、届け出て、周知するだけ。整備の見通しは、もう半分立っています。
チェックリスト(コピーして使えます)
育児・介護休業規程を整えるときの、抜け漏れ防止用の確認項目です。項目は多く見えますが、まずは上から順に見ていけば大丈夫です。
- 育児・介護休業の定めが、就業規則本体か別規程か把握しているか
- 規程の最終改定日を確認したか(2025年より前なら要見直し)
- 厚生労働省の最新の規定例(2025年改正対応)を入手したか
- 子の看護等休暇の見直しを反映したか
- 残業免除(所定外労働の制限)の対象拡大を反映したか
- 柔軟な働き方を実現するための措置を検討・反映したか
- 個別の周知・意向確認の段取り(誰に・いつ・何を)を決めたか
- 過半数代表の意見を聴き、意見書をもらったか
- 変更後の規程を労働基準監督署に届け出たか
- 変更後の内容を全員が見られる形で周知したか
- 判断に迷う点は、社会保険労務士や労働局に確認したか
よければ、こちらも
まず社内規程全体の中での位置づけを知りたいときは「社内規程は何から作る?ひとり労務のための整備の優先順位」から。変更の手続きそのものは「就業規則を変更したときの届出と周知の手順」に、育児休業中の社会保険料は「産前産後・育児休業中の社会保険料免除の手続き」に、1年の届出タイミングを見渡したいときは「ひとり労務の年間スケジュール」に、それぞれ分けて整理しています(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、規程まわりや毎年の段取りに役立ててください。

育児・介護休業規程の見直しは、「改正が多い」と聞くと身構えてしまいますが、やることは最新の規定例に合わせるだけです。ゼロから条文を考える必要はありません。今日、規程の改定日を確かめて、最新の規定例を手元に用意できたなら、それだけでもう大きな一歩です。一度に完璧を目指さず、大きな差から順に埋めていきましょう。あなたが整えたその規程は、子育てや介護と仕事を両立しようとする人が、安心して制度を使うための、確かな支えになります。
本記事は一般的な実務情報です。育児・介護休業の制度内容や事業主に求められる対応、規程の記載事項・届出・周知の取扱いは、個別の事情や法改正によって変わります。とくに育児・介護休業は制度の見直しが続いている分野です。適用範囲や最新の要件は、厚生労働省・都道府県労働局・e-Gov法令検索などの公式情報でご確認のうえ、最終的な判断は社会保険労務士・所轄の労働基準監督署など最新の公式情報でご確認ください。