秋の事務所で、扶養控除等申告書や保険料控除申告書など年末調整の控除申告書を種類ごとに並べて回収状況を確認している中小企業のひとり労務担当者

扶養控除等申告書と保険料控除申告書の集め方・確認ポイント|ひとり労務

「年末調整の書類、今年もそろそろ配らないと」。 そう思いながら、扶養控除等申告書に保険料控除申告書、それに配偶者や基礎控除の紙……様式が何種類もあって、誰から何を返してもらうのか、毎年少し迷いますよね。ひとりで労務を回していると、「去年はどの紙を配ったっけ」と昨年分の控えを探すところから始まることもあると思います。

まずお伝えしたいのは、年末調整で集める書類は種類こそ多いものの、やることは「①その年分の様式を配る → ②締切までに集める → ③一枚ずつ確認する」という段取りの繰り返しだということ。難しい計算を先に背負い込む必要はありません。この記事では、それぞれの申告書が何のための紙なのかを整理したうえで、集め方の順番と、確認でつまずきやすいポイントを、ひとり労務の目線で一つずつ見ていきます。

結論:年末調整で従業員から集める控除申告書は、主に4種類です。①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養している家族や本人の区分を申告)、②基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(本人・配偶者の所得を見積もって基礎控除・配偶者(特別)控除などを申告する1枚の様式)、③給与所得者の保険料控除申告書(生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金を申告。控除証明書の添付が必要)、④住宅ローン控除2年目以降の人だけが出す住宅借入金等特別控除申告書。集め方は「その年分の最新様式を配る → 締切を決めて回収する → 添付書類と所得の見積りを一枚ずつ確認する」の順で進めれば大丈夫。扶養控除等申告書だけは入社時やその年最初の給与前にも提出が必要な紙で、年末調整のときには「翌年分」もあわせて配ると段取りがよくなります。

進める順番は次のとおりです。

  1. その年分の最新様式と手引きを国税庁で確認し、配るセットを決める
  2. 配布・回収の締切を先に決めて、証明書の添付とセットで案内する
  3. 返ってきた申告書を、種類ごとに「添付書類・所得の見積り・記入漏れ」の順で確認する
  4. 確認できたものから、年末調整の計算に回す

何が起きているか:4種類の申告書で「その人に合った控除」を集めている

扶養控除等申告書・基礎/配偶者控除申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書の4種類が何のための紙かを並べた対応図
集める紙は主に4種類。「家族」「所得」「保険料」「住宅」で覚えると迷いにくい

年末調整は、毎月の給与から少しずつ預かってきた源泉所得税を、その人の1年間の実際の控除に合わせて精算する手続きです。ただ、「誰にどんな控除があるか」は会社側では分かりません。扶養している家族がいるか、生命保険に入っているか、住宅ローンを組んだか——それを本人に申告してもらう紙が、控除申告書です。

つまり申告書は、控除の「申し出」を集める書類です。だからこそ、集める段階では中身を細かく直そうとするより、「その人に必要な紙が、正しく・漏れなく返ってきているか」を見るのが先になります。主な4種類を、役割で整理すると次のようになります。

申告書何を申告する紙か主な確認ポイント
扶養控除等(異動)申告書扶養している家族、本人の障害者・寡婦・ひとり親などの区分扶養親族の所得要件、16歳未満(年少扶養)の記載欄、他の人の扶養と重複していないか
基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書本人と配偶者の1年間の所得見積り、基礎控除・配偶者(特別)控除など所得の「見積り」であること、配偶者控除と配偶者特別控除の区分、給与収入850万円超の調整控除
保険料控除申告書生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金控除証明書の添付、新旧の生命保険料区分、本人が支払ったものか
住宅借入金等特別控除申告書住宅ローン控除(2年目以降の人だけ)税務署発行の証明書と金融機関の残高証明書がそろっているか
※様式の正式名称や記載欄は、その年分の改正で変わることがあります。配布前に、必ずその年分の様式・手引きを国税庁「年末調整がよくわかるページ」で確認してください。1年目の住宅ローン控除は年末調整ではなく本人の確定申告になる点も、あわせて案内すると親切です。

具体例:一人の従業員から4種類がそろうまで

たとえば、配偶者と小学生の子どもがいて、生命保険に入り、昨年家を買った従業員がいたとします。この人からは、次のように書類が返ってきます。

ここで大切なのは、この人には4種類そろうけれど、独身で保険にも入っていない従業員なら「扶養控除等申告書」と「基礎控除等の申告書」の2枚で足りることもある、ということです。全員に同じ枚数を求めるのではなく、「その人に必要な紙は何か」を配布のときに一言添えると、回収がぐっとスムーズになります。

影響:紙が1枚欠けると、精算が止まってしまう

控除申告書は、年末調整の計算の「材料」です。1枚欠けたり、証明書の添付が漏れたりすると、その人の精算だけ後回しになり、12月の給与計算のときに一人だけ宙に浮いてしまいます。

とはいえ、これらは責める話ではありません。従業員も本業のかたわらで書いてくれています。欠けていたら、静かにもう一度お願いする——それで十分回ります。

明日やること(今日はここだけで大丈夫)

全部を一度に整えようとしなくて大丈夫です。まずは配る準備の入口だけ、今日ひとつ進めてみましょう。

  1. その年分の最新様式を確認する:国税庁の年末調整ページで、その年分の申告書様式と手引きが公表されているかを見て、必要な様式をダウンロードする(例年、秋までに公表されます)。
  2. 配布セットを1つ作る:4種類の申告書に「記入例」と「控除証明書を添えてください」の一言案内を添えて、配布のひな型を1セット用意する。全員に同じものを配り、不要な紙は出さなくてよいと添える。
  3. 回収の締切を1つ決める:「いつまでに、何を出してほしいか」を先に決めて周知する。証明書の添付もセットで案内する。

この3つだけでも、年末調整の「集める」土台が整い始めます。確認や計算は、書類がそろってから順番に進めれば十分です。

チェックリスト(コピーして使えます)

配布から確認までの抜け漏れを防ぐための確認項目です。

配る前

集めたあと(一枚ずつ)

最低ライン(時間がないときはこの3点で可) 1) その年分の様式で配れているか 2) 保険料控除の「証明書の添付」が全員そろっているか 3) 回収締切を決めて周知できているか

よければ、こちらも

集めた申告書は、このあと年末調整の計算につながっていきます。全体の段取りを見渡したいときは「年末調整の全体の流れと必要書類のそろえ方」、保険料控除の計算の中身は「保険料控除の控除額の求め方」、毎月の給与から預かる税金の土台は「給与計算の基本の流れ(総支給→控除→差引支給)」や「源泉所得税(甲欄・乙欄)の求め方と税額表の見方」があわせて役立ちます。紙での回収がつらくなってきたら「年末調整の電子化(年調ソフト)のはじめ方」もどうぞ(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、毎年の年末調整の段取りづくりに役立ててください。

年末調整の控除申告書を種類ごとに集め終え、整理された書類の束を前に肩の力が抜けて穏やかにほほえむ中小企業のひとり労務担当者
集める紙の役割さえ分かれば大丈夫。今年の年末調整は、もう前に進み始めています

控除申告書は、種類が多いだけで、一つひとつは「その人に必要な控除を教えてもらう紙」です。全部を一度に覚えようとしなくて大丈夫。今日、「家族・所得・保険料・住宅」という4つの入口が整理できたなら、もう配る準備の半分は終わっています。今年つくった配布セットや案内文は、来年のあなたをそのまま助けてくれます。ひとつずつ、落ち着いて集めていきましょう。


本記事は一般的な実務情報です。控除申告書の様式・控除額・添付書類の要件は、税制改正や個別の事情によって変わります。その年分の具体的な取扱いは、国税庁「年末調整がよくわかるページ」など公式情報でご確認のうえ、最終的な判断は税理士・所轄の税務署など最新の公式情報でご確認ください。

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