事務所の机で給与計算のノートと源泉徴収税額表を見比べ、どの欄を見ればよいか一つずつ確認している中小企業のひとり労務担当者

源泉所得税の求め方|甲欄・乙欄と税額表の見方ガイド

「この人の源泉、いくら引けばいいんだっけ」。 給与計算の締めが近づくと、一人ひとりの源泉所得税を確かめながら、税額表のどの列を見ればいいのか、ふと迷うことがありますよね。甲欄なのか乙欄なのか、扶養はどう数えるのか——毎月のことなのに、いざ表を前にすると一つずつ立ち止まってしまう。ひとりで労務を回していると、去年の控えや前任者のメモを探すところから始まる、そんな作業だと思います。

まずお伝えしたいのは、源泉所得税は「3つの数字を順番に出して、表に当てはめるだけ」で必ず求まる、ということです。やることは「①その月の社会保険料控除後の金額を出す → ②甲欄か乙欄かを決める → ③(甲欄なら)扶養親族等の数を数える → ④月額表の交わるところを読む」の4ステップ。一度この流れを自分のものにすれば、来月からは当てはめるだけで済みます。 この記事では、源泉徴収のしくみという前提から、甲欄・乙欄の分け方、扶養親族等の数え方、税額表の見方、賞与や年末調整とのつながりまで、ひとり労務の目線で、いつもより一歩踏み込んで一つずつ整理していきます。

結論:毎月の給与から引く源泉所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて求めます。当てはめるのに必要なのは2つの数字、「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」「扶養親族等の数」です。扶養控除等(異動)申告書を会社に出している人は「甲欄」(扶養の数で税額が変わる・通常はこちら)、出していない人は「乙欄」(扶養の数に関係なく高めの一定額)で読みます。日雇いなどは「丙欄」。源泉所得税は仮の前払いで、年末に年末調整で1年分を精算します。だから毎月の源泉は「ぴったり正確」でなくても、表どおりに引けていれば大丈夫です。

進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。

  1. その月の給与(課税対象)から社会保険料を引いて「社会保険料等控除後の金額」を出す
  2. その人が「甲欄」か「乙欄」かを決める(=申告書を出しているか)
  3. 甲欄なら「扶養親族等の数」を数える
  4. 月額表で、金額の行と扶養の数の列が交わるところを読む

何が起きているか:源泉徴収は「会社が代わりに前払い」するしくみ

源泉所得税の計算が難しく感じるのは、計算そのものが複雑だからではありません。「給与から天引きして会社が国に納める」という、ふだん意識しないしくみが間に入っているからです。

本来、所得税は働く人それぞれが1年分をまとめて納めるものです。ただ、それを全員が自分で申告・納付するのは大変なので、給与を払う会社が、毎月の給与からあらかじめ概算の所得税を預かって、本人に代わって国に納めることになっています。これが源泉徴収です。

ここで大事なのは、毎月引く源泉所得税はあくまで「仮の前払い」だということです。1年が終わったときに、生命保険料控除や扶養の状況などを反映して正確な税額を計算し直すのが年末調整です。だから毎月の源泉は、表のとおりに引けていれば、多少の過不足は年末で精算される——そう考えると、肩の力が少し抜けると思います。

なお、源泉徴収の対象になる「給与等」は、基本給だけでなく各種手当も含みます。一方で、通勤手当のうち非課税限度額の範囲内のものなどは課税対象から外れます。「表に当てはめる金額」は、まずこの課税・非課税の仕分けを済ませた後の金額だ、と押さえておくと取り違えを防げます。

ステップ1:表に当てはめる「金額」を出す

その月の給与総額から非課税の通勤手当と社会保険料を順に差し引いて、税額表に当てはめる「社会保険料等控除後の金額」を出す流れを示した概念図
いきなり税額を引かない。まず「表に当てはめる金額」を、引き算で整えるのが最初の一歩

まず、税額表に当てはめるための金額を出します。これは「社会保険料等控除後の給与等の金額」と呼ばれ、次の順番で求めます。

  1. その月の給与の総額を出す(基本給+各種手当)
  2. 非課税のもの(非課税限度内の通勤手当など)を除く = 課税対象の給与
  3. そこから、その月に天引きする社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の本人負担分)を差し引く

こうして出た金額が、税額表の縦軸(行)になります。

ここで間違えやすいのが、社会保険料を引く前の金額で表を見てしまうことです。源泉徴収税額表は「社会保険料を引いた後の金額」で見る前提なので、引く前の総額で見ると税額が大きく出てしまいます。「保険料を引いた後の金額で表を見る」——ここだけは最初に押さえておきたいポイントです。

ステップ2:甲欄・乙欄・丙欄のどれで見るかを決める

扶養控除等申告書を会社に提出しているかどうかで、甲欄か乙欄かに分かれることを示した分岐の概念図
申告書を出していれば甲欄、出していなければ乙欄。まずこの分かれ道を確かめる

次に、月額表の「どの欄」で読むかを決めます。これは難しい判断ではなく、その人が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に出しているかで、ほぼ決まります。

どんな人見方の特徴
甲欄扶養控除等申告書を提出している人(その会社が「主たる給与」の勤務先)扶養親族等の数で税額が変わる。通常の社員・パートはこちら
乙欄申告書を提出していない人(掛け持ちの「従たる給与」など)扶養の数に関係なく、甲欄より高めの一定額で引く
丙欄日雇い・短期(継続2か月以内)の人など日額表の丙欄で読む。該当は限定的

ポイントは、扶養控除等申告書は「同時に1か所」にしか出せないということです。掛け持ちで働く人は、メインの勤務先に申告書を出して甲欄、もう一方の勤務先では乙欄、という形になります。新しく入った人の源泉を決めるときは、まず「うちに申告書を出してもらっているか」を確認するのが出発点です。

申告書がないまま甲欄で引いてしまうと、本来より少なく天引きしてしまうことになります。入社時に申告書を回収できているか、ここは丁寧に押さえておきたいところです。

ステップ3:扶養親族等の数を数える(甲欄のとき)

甲欄で読む人は、「扶養親族等の数」を数えます。ここがいちばん迷いやすいので、落ち着いて一つずつ確認しましょう。基本は次の合計です。

これに、次のような事情があるときは人数を加算します(一人につき数を足していくイメージです)。

ここで取り違えやすいのが、16歳未満の子(年少扶養親族)は、扶養控除の対象ではないので「数」には含めないという点です。「子どもが2人いるから2人」と数えたくなりますが、16歳未満は税額表の扶養親族等の数には入りません(住民税の計算では考慮されますが、源泉所得税の月額表の人数には入れない、という違いです)。お子さんがいる方の源泉を見るときは、年齢で分けて数えると間違えにくくなります。

扶養の状況は年の途中で変わることがあります(結婚・出産・親の扶養入りなど)。そのつど扶養控除等申告書の「異動」を出してもらい、翌月以降の人数に反映します。毎月ゼロから数え直すのではなく、「変化があったら直す」と考えると負担が軽くなります。

ステップ4:月額表の交わるところを読む

税額表の縦軸である社会保険料控除後の金額の行と、横軸である扶養親族等の数の列が交わるところに税額があることを示した概念図
縦は「金額の段」、横は「扶養の数」。その交わるマスが、その人の源泉所得税

ここまで来たら、あとは表に当てはめるだけです。国税庁が毎年公表する「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を用意して、次のように読みます。

  1. 縦軸:ステップ1で出した「社会保険料等控除後の給与等の金額」が、表の「以上〜未満」のどの段に入るかを探す
  2. 横軸:甲欄の中で、ステップ3で数えた「扶養親族等の数(0人・1人・2人…)」の列を選ぶ
  3. 交点:縦と横が交わるマスに書かれた金額が、その月の源泉所得税

乙欄の人は、扶養の数の列ではなく、表の右側にある乙欄の金額をそのまま読みます(扶養の数は使いません)。

月給制の人は月額表を使いますが、日給・週給・日割りで支払う場合は「日額表」を使います。自社の給与の支払い方に合った表を選ぶことも、最初に確認しておきたいポイントです。

表は毎年更新されます。年が替わったら、必ずその年分の最新の税額表を国税庁のサイトで取得してから使いましょう。古い表のまま見てしまうと、年間を通して少しずつズレが出てしまいます。

具体例:月給制の社員の源泉を出してみる

言葉だけだとイメージしにくいので、流れだけを具体的に追ってみます(金額は表で読む前提なので、ここでは「どう数えるか」に絞ります)。

ある月給制の社員Aさんの、ある月の状況がこうだったとします。

このとき、

  1. 社会保険料等控除後の金額:280,000 − 42,000 = 238,000円(→ 表の縦軸)
  2. 申告書あり → 甲欄で読む
  3. 扶養親族等の数:配偶者1人 + 18歳の子1人 = 2人(14歳は数えない)
  4. 月額表の「238,000円が入る段」と「扶養親族等の数2人」の列が交わるマスを読む → その金額が源泉所得税

このように、「金額・甲乙・人数」の3点さえ決まれば、あとは表の1マスを読むだけです。数字を覚える必要はなく、毎月この手順をなぞれば大丈夫です。

賞与と、年末調整とのつながり

毎月の給与とは別に、賞与(ボーナス)にも源泉徴収があります。賞与は月額表ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。

毎月の表とは見方が少し違うので、賞与月は「賞与用の表を使う」と意識しておくと取り違えません。

そして、毎月・賞与で引いてきた源泉所得税は、1年の最後に年末調整でまとめて精算します。年末調整では、生命保険料控除・地震保険料控除・扶養の確定・住宅ローン控除(2年目以降)などを反映して、その人の正しい年税額を計算し、毎月の天引き合計との差額を還付または追加徴収します。

つまり、毎月の源泉は「途中経過」、年末調整が「答え合わせ」という関係です。毎月の源泉が表どおりに引けてさえいれば、細かな控除は年末でちゃんと反映されるので、毎月の段階で抱え込みすぎなくて大丈夫です。

影響:欄や人数の取り違えは、毎月じわじわ効いてくる

源泉所得税の取り違えは、一回あたりは小さくても、毎月・全員ぶんで積み重なると無視できないズレになります。

どれも、「申告書の有無を確認」「金額は社会保険料控除後」「16歳未満は数えない」「最新の表を使う」の4点を押さえれば、ほとんど防げます。年末調整で精算されるとはいえ、毎月の天引きが大きくぶれると本人の手取りに響くので、ここは落ち着いて確認したいところです。

明日やること(まずはここだけ)

今日いきなり全員ぶんを見直す必要はありません。小さな確認から始めましょう。

  1. 申告書の有無を一覧にする:在籍者のうち、扶養控除等申告書を提出している人(甲欄)と未提出の人(乙欄)を、名簿に一列足して整理する。
  2. 最新の税額表を手元に置く:国税庁のサイトから、その年分の「源泉徴収税額表」(月額表・必要なら日額表・賞与の算出率表)をダウンロードして、すぐ見られるようにする。
  3. 1人ぶんだけ手順をなぞる:誰か1人を選び、「社会保険料控除後の金額 → 甲乙 → 扶養の数 → 表の交点」の4ステップを通しで確認してみる。

この3つをやっておくだけで、来月の給与計算がぐっと落ち着いて進められます。

チェックリスト(コピーして使えます)

源泉所得税の取り違えを防ぐための確認項目です。

よければ、こちらも

源泉所得税は、給与計算という大きな流れの一部です。まずは全体像を「給与計算の基本の流れ|総支給から差引支給まで」で押さえ、源泉と並んで天引きする「算定基礎届の書き方と提出スケジュール」や、1年の提出物を見渡す「ひとり労務の年間スケジュール」もあわせて読むと、毎月と1年のつながりが見えてきます(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、毎月の給与計算や年末調整の段取りづくりに役立ててください。

源泉所得税の確認を終え、整理された給与計算の資料を前に肩の力が抜けて穏やかにほほえむ労務担当者
「金額・甲乙・人数」の3点さえ押さえれば大丈夫。来月の給与計算が、きっと少し軽くなります

源泉所得税は、一度で完璧に覚えようとしなくて大丈夫です。 今日、「表に当てはめる金額は社会保険料控除後」「甲欄か乙欄かは申告書で決まる」「16歳未満は数えない」という3つの軸が整理できたなら、もう大きな山は越えています。毎月の手続きだからこそ、今つくった名簿や手順のメモが、来月のあなたを助けてくれます。一つずつ、落ち着いて進めていきましょう。


本記事は一般的な実務情報です。源泉所得税・年末調整の取扱いは、個別の事情や税制改正によって変わり、税額表も毎年更新されます。扶養親族等の数の数え方や各種控除の要件など最新の取扱いは、国税庁の公表資料でご確認のうえ、最終的な判断は、税理士・所轄の税務署など最新の公式情報でご確認ください。

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