時間外労働の上限規制|年720時間・月45時間の基本をやさしく整理

「今月、あの人の残業、けっこう多かったな」。 勤怠を締めながら、ふとそう思う瞬間はありませんか。忙しい月が続くと、気づかないうちに残業が積み上がっていることがあります。上限規制という言葉は知っていても、いざ「年720時間って、どこから数えるの」「休日出勤も入るの」と聞かれると、少し迷いますよね。

まずお伝えしたいのは、上限規制は覚える数字が限られているということです。原則と、特別条項のときの4つのライン。この5つを一度おさえて、月次で見る習慣をつくれば大丈夫です。 この記事では、何が上限なのか・何を数えるのか・いつ確認するのかを、ひとり労務の目線で順番に整理していきます。

結論:時間外労働の上限は、原則「月45時間・年360時間」。臨時的な特別の事情があって特別条項を結んだ場合でも、①年720時間以内、②休日労働を含めて単月100時間未満、③休日労働を含めて複数月(2〜6か月)平均80時間以内、④月45時間を超えられるのは年6回まで、の4つを必ず守ります。①は時間外のみ、②③は休日労働も合算して数えるのがポイント。これらは法律上の上限で、違反には罰則があります。まずは自社の36協定の年度(起算日)を確認し、月次で残業時間を集計する仕組みをつくりましょう。

見るときは、次の順番だと迷いにくくなります。

  1. まず自社の36協定の「起算日(年度の始まり)」を確認する
  2. 「原則(月45・年360)」と「特別条項の4ライン」を早見表にする
  3. 月次で一人ずつ残業時間を集計し、上限に近い人を早めに把握する

何が起きているか:数字が「複数」あるから迷う

上限規制がややこしく感じるのは、計算が難しいからではありません。守るべき数字が原則と特別条項で分かれていて、しかも「時間外だけで数えるもの」と「休日労働も足して数えるもの」が混在しているからです。

まず、大きく2段階に分かれます。

そのうえで、特別条項の4ラインはこう整理できます。

ここで大事なのは、「年720時間」は時間外労働だけで数えるのに対し、「単月100時間未満」と「複数月平均80時間以内」は休日労働も合算するという違いです。ここを取り違えると、集計の数字がずれてしまいます。

なお、これらは労働基準法のすべての業種に適用されています。以前は建設業・自動車運転の業務・医師などに猶予がありましたが、その猶予は2024年4月で終わり、今は取扱いに一部の特例を残しつつ、上限規制の枠組み自体はすべての業種にかかっています。「うちの業種はまだ関係ない」という状態ではない、という前提で見ておくと安心です。

具体例:早見表にして、月次で当てはめる

守るべき数字を一枚の表にまとめると、毎月は当てはめるだけで済みます。下が早見表です。

区分ライン何を数えるか
原則月45時間まで時間外労働
原則年360時間まで時間外労働
特別条項年720時間以内時間外労働のみ
特別条項単月100時間未満時間外+休日労働
特別条項複数月平均80時間以内時間外+休日労働
特別条項月45時間超は年6回まで回数(時間外)で判定

たとえば、ある月に「時間外労働が70時間、休日労働が15時間」だったとします。

このように、同じ月でも「時間外だけで見るライン」と「休日労働を足して見るライン」を分けて当てはめるのがコツです。特に見落としやすいのが複数月平均で、単月では収まっていても、忙しい月が続くと平均が80時間を超えてしまうことがあります。

複数月平均の数え方

複数月平均は、「直近2か月」「直近3か月」…「直近6か月」のどの区間で平均しても80時間以内でなければなりません。ある月を締めたら、その月を最後尾にした2〜6か月の平均を順に確認する、というイメージです。忙しい月の翌月以降も、しばらくは平均に効いてくる点に注意しておくと安心です。

「起算日」を先に決めておく

年720時間や年6回は、36協定で定めた起算日から1年間で数えます。会計年度や暦年と一致しているとは限りません。まず自社の36協定を開き、起算日がいつかを確認しておくと、「今の残業は今年度の何時間目か」を迷わず追えます。

影響:上限を超えると、罰則と信頼の両方に響く

上限規制は「努力目標」ではなく法律上の上限です。超えてしまうと、次のような影響があります。

とはいえ、これは担当者を責める話ではありません。数字を先に把握できる仕組みさえあれば、超える前に手を打てます。大切なのは、締めてから気づくのではなく、月の途中で「今月は上限に近い人がいる」と見えている状態をつくることです。

明日やること(まずはここだけ)

全部を一度に整える必要はありません。明日できる小さな一歩から始めましょう。

  1. 自社の36協定を開き、起算日(年度の始まり)をメモする。
  2. 上の早見表を自社用に1枚コピーして、原則と特別条項の数字を書き出す。
  3. 直近1か月ぶんでいいので、残業が多そうな1〜2人の「時間外」と「休日労働」を分けて集計してみる。
  4. その人の「単月(時間外+休日)」と「月45時間超かどうか」だけ、まず確認する。

これだけで、上限を月次で追う土台ができあがります。

チェックリスト(現場用:最低ライン→優先→代替→免除)

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上限規制の前提になる「36協定の届出」や、実際に残業代を計算する「割増率」も、別の記事で一つずつ整理しています。あわせて読むと、残業まわりの実務が一通りつながって、毎月の管理がより安心して進められます(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、毎月の勤怠チェックの段取りづくりに役立ててください。

上限規制の数字は、一度で完璧に覚える必要はありません。 今日、原則と特別条項の4ラインが整理できて、「何を数えるか」の違いが見えたなら、それだけでもう前に進んでいます。まずは起算日と早見表から。月の途中で数字が見えていれば、慌てる場面はきっと減っていきます。


本記事は一般的な実務情報です。労務・労働時間の取扱いは、個別の事情や法改正、就業規則の定めによって変わります。最終的な判断は、社会保険労務士・所轄の労働基準監督署など最新の公式情報でご確認ください。

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