
マイナ保険証と資格確認書|入社・退社でひとり労務がやること
「新しく入った人の保険証、いつ届くんだっけ……そもそも、もう紙の保険証って出ないんだよね?」。 入社手続きで資格取得届を出したあと、ふとそんな疑問がよぎることはありませんか。紙の健康保険証はもう発行されなくなり、代わりに「マイナ保険証」と「資格確認書」という言葉が並ぶようになりました。似たような書類も届くので、どれを本人に渡せばいいのか、退職のときは何を回収すればいいのか、迷いやすいところです。
まずお伝えしたいのは、ひとり労務がやること自体は、これまでとそれほど変わらないということです。資格取得届を出す、資格喪失届を出す、届いたものを本人に渡す・回収する——この骨組みは同じです。変わったのは「本人の手元に残るもの」が、紙の保険証から、マイナ保険証か資格確認書に置きかわった点だけ。 この記事では、いまの二本立ての仕組みと、入社・退社でやることを、順番に整理していきます。
結論:紙の健康保険証は新規発行が終わり、いまは ①マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」 と、②それを持たない人に交付される「資格確認書」 の二本立てです。入社で資格取得届を出すと、マイナ保険証の利用登録がある人には資格情報を知らせる「資格情報のお知らせ」が、登録がない人には「資格確認書」が交付されます(紙の保険証は出ません)。退職では資格喪失届を出し、資格確認書を持っている人からはそれを回収します(マイナ保険証だけの人は回収物なし)。細かな様式・回収方法は加入している保険者(協会けんぽ・健保組合)で異なるので、迷ったら自社の保険者に確認するのが確実です。
迷ったときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- その人は「マイナ保険証の利用登録」をしているか、していないか
- 入社なら「届いたものを本人へ渡す」、退職なら「資格確認書があれば回収する」
- 様式や回収の細かいルールは、自社の保険者の案内で確認する
何が起きているか:紙の保険証がなくなり、二本立てになった
これまで長く使われてきた紙(カード型)の健康保険証は、2024年12月に新規発行が終了しました。すでに持っていた保険証にも経過措置がありましたが、その期間も過ぎ、いまは手元の紙の保険証は使えなくなっています。代わりに、健康保険の資格を確認する方法が次の二つに整理されました。
- マイナ保険証…マイナンバーカードを、健康保険証として使えるように「利用登録」したもの。医療機関の窓口にある読み取り機(オンライン資格確認)にかざして受診します。カード自体は本人が持っているので、会社から新たに何かを配る必要はありません。
- 資格確認書…マイナ保険証を持っていない・利用登録していない人に交付される書面です。これを医療機関の窓口で見せれば、これまでの保険証と同じように受診できます。当分の間は申請しなくても交付される(プッシュ型)扱いで、有効期限が設けられています。
ここで一つ、名前が紛らわしいものがあります。「資格情報のお知らせ」です。これはマイナ保険証を使う人に交付される、自分の保険資格(記号・番号など)を確認するための書面で、それ単体では保険証としては使えません。読み取り機が使えない医療機関などで、マイナンバーカードと一緒に補助的に使うものです。
用語メモ:オンライン資格確認
医療機関や薬局が、患者さんの健康保険の資格をその場でオンラインで確認できる仕組みのことです。マイナ保険証をかざすと、この仕組みで資格が確認されます。ひとり労務が直接操作するものではありませんが、「マイナ保険証はこれで成り立っている」と知っておくと、仕組みの理解がぐっと楽になります。
つまり、本人の手元に残るのは「マイナ保険証(=自分のマイナンバーカード)」か「資格確認書」のどちらか。会社としては、入社した人にどちらが届くのかを見分けて、届いたものを本人に渡す——ここがいちばんの実務です。
具体例:入社と退社で、やることはこう変わる

言葉だけだと分かりにくいので、入社・退社の場面ごとに整理してみます。
入社したとき
- これまでどおり、健康保険・厚生年金保険の資格取得届を年金事務所(または健保組合)へ提出します。ここは変わりません。
- 手続き後、本人のもとに届くものは、マイナ保険証の利用登録がある人は「資格情報のお知らせ」、登録がない人は「資格確認書」です。紙の保険証は交付されません。
- 会社を経由して届いた場合は、そのまま本人(扶養家族の分も含む)へ渡します。マイナ保険証を使う人でも、資格情報のお知らせは大切に保管してもらうよう一言添えると親切です。
- 本人がマイナンバーカードをまだ保険証として使えるようにしていない場合は、「利用登録すると資格確認書がなくても受診できます」と案内できます。ただし登録は本人の任意なので、強制はできません。
退職したとき
- これまでどおり、資格喪失届を提出します。退職日の翌日が資格喪失日です。
- 資格確認書を交付されている人からは、その資格確認書を回収します(本人・扶養家族の分とも)。回収したものは保険者の案内に従って返却または処分します。
- マイナ保険証だけの人からは、回収するものはありません。資格喪失の手続きをすれば、その資格では使えなくなります。ただし、退職後にすぐ受診しないよう「今日から前の会社の保険では受診できません」と伝えておくと、窓口でのトラブルを防げます。
扶養家族が増えた・減ったとき
- 被扶養者(異動)届を提出すると、増えた家族にも資格確認書または資格情報のお知らせが交付されます。減ったとき(扶養から外れたとき)は、家族分の資格確認書があれば同じように回収します。
早見表にすると、こう整理できます。
| 場面 | ひとり労務がやること | 本人の手元に残るもの |
|---|---|---|
| 入社(利用登録あり) | 資格取得届を提出/届いた通知を渡す | 資格情報のお知らせ(保険証はマイナカード) |
| 入社(利用登録なし) | 資格取得届を提出/届いた書面を渡す | 資格確認書 |
| 退職(資格確認書あり) | 資格喪失届を提出/資格確認書を回収 | なし(回収する) |
| 退職(マイナ保険証のみ) | 資格喪失届を提出 | なし(回収物なし) |
ポイントは、「回収するのは資格確認書だけ」「マイナ保険証の人からは回収しない」という点。ここを押さえておけば、退職手続きで慌てずに済みます。
高額療養費のときに少しラクになる
もう一つ知っておくと役立つのが、高額な医療費がかかったときの話です。マイナ保険証を使っている人は、窓口で情報が連携されるため、限度額適用認定証の事前申請が原則いらなくなります(窓口の支払いが自己負担限度額までで済む)。資格確認書だけの人は、これまでどおり認定証の申請が必要になる場合があります。従業員から「入院することになって……」と相談されたときの、案内の引き出しとして持っておくと安心です。
影響:知らないと「渡し忘れ」「回収し忘れ」が起きやすい
仕組みが変わった直後は、これまでのクセで動いてしまい、小さな抜けが起きがちです。
- 「保険証が届くはず」と待っていたら、実際に届いたのは資格情報のお知らせだけ → 本人が「保険証がない」と不安になる(→ マイナ保険証で受診できると伝えれば解決)
- 退職者から紙の保険証を回収しようとしたが、そもそも持っていない → 資格確認書の有無を先に確認していれば迷わない
- 資格確認書を回収し忘れる → 保険者への返却が抜け、あとで問い合わせが来る
どれも、「この人はマイナ保険証か、資格確認書か」を先に確認するクセをつけておけば防げます。制度が変わったばかりで戸惑うのは自然なこと。ひとつずつ確認していけば大丈夫です。
明日やること(まずはここだけ)
全部を一度に完璧にする必要はありません。明日できる小さな一歩から始めましょう。
- 自社が加入している保険者(協会けんぽか、健保組合か)を確認し、その保険者のサイトで「資格確認書・資格情報のお知らせ」の案内ページを一度だけ開いてブックマークしておく。
- 直近で入社した人がいれば、その人に「マイナ保険証」か「資格確認書」のどちらが届いた(届く予定)かを一つ確認してみる。
- 退職手続きの自社チェックリストに「資格確認書があれば回収」の一行を足しておく。
- 入社案内の書類に「マイナンバーカードの保険証利用登録のご案内(任意)」を一枚加えるかどうか、検討してみる。
これだけで、次の入退社のときに迷う場面がぐっと減ります。
チェックリスト(現場用:最低ライン→優先→代替)
- 最低ライン(ここだけは必ず)
- 入社時、これまでどおり資格取得届を提出している
- 届いた資格確認書・資格情報のお知らせを、本人(扶養家族分も)へ渡している
- 退職時、資格喪失届を提出している
- 退職者が資格確認書を持っていれば、回収して保険者の案内どおりに処理している
- 優先して確認(迷いやすいところ)
- マイナ保険証だけの退職者からは「回収物がない」と理解できている
- 「資格情報のお知らせ」は保険証ではない、と本人に説明できる
- 扶養家族の増減でも、資格確認書の交付・回収を忘れていない
- 自社の保険者(協会けんぽ/健保組合)の様式・手順を一次情報で確認した
- できないときの代替(暫定運用)
- どちらが届くか本人の登録状況が分からない → まず本人にマイナ保険証の利用登録の有無を確認する
- 回収方法が分からない → 自己判断で処分せず、保険者へ返却方法を問い合わせる
よければ、こちらも
この記事の前提になる「健康保険・厚生年金の資格取得届の書き方」や「資格喪失届の提出期限と退職日との関係」、扶養の増減でつかう「被扶養者(異動)届の必要書類」も、別の記事で一つずつ整理しています。入社・退社の全体像は「入社手続きの必要書類と順番」「退職手続きの流れ」とあわせて読むと、手続きの流れがつかみやすくなります(記事一覧)。 人事・労務の実務のヒントは、メールでも受け取れます。よければ登録して、日々の手続きの確認に役立ててください。

制度が大きく変わると、慣れるまでは誰でも戸惑います。 でも、今日「入社した人には資格情報のお知らせか資格確認書が届く」「退職では資格確認書だけを回収する」という骨組みがつかめたなら、それだけでもう前に進んでいます。細かい様式は自社の保険者に確認しながら、少しずつ自分のやり方に落としこんでいきましょう。あなたが落ち着いて手続きを進められるように、この記事がその隣にいられたらうれしいです。
本記事は一般的な実務情報です。マイナ保険証・資格確認書の取扱いや様式・交付/回収の方法は、加入する保険者や個別の事情、制度改正によって変わります。最終的な判断は、加入している健康保険の保険者(協会けんぽ・健保組合)、所轄の年金事務所、社会保険労務士など最新の公式情報でご確認ください。