
賞与支払届の書き方と社会保険料の計算|提出は5日以内
「賞与を払い終えてホッとしたのも束の間、そういえば届出があったはず」。 給与計算とは別に、年に一度か二度だけやってくるのが賞与支払届です。回数が少ないぶん、「期限はいつまでだっけ」「保険料はどう計算するんだっけ」と、毎回ゼロから思い出している方も多いと思います。普段ひとりで労務を回していると、賞与の支給準備だけで手一杯で、届出は後回しになりがちですよね。
まずお伝えしたいのは、賞与支払届は支払ったあとに出す、決まった型の手続きだということです。やることは「①標準賞与額を出す → ②控除額を計算して支払時に控除 → ③支払日から5日以内に届出 → ④納入告知後に会社負担分も含め納付」。この順番を自分の型にしておけば、次の冬の賞与も落ち着いて進められます。 この記事では、提出期限から標準賞与額の出し方、控除の計算、迷いやすい上限や不支給の扱いまで、ひとり労務の目線で一つずつ整理します。
結論:賞与支払届は、賞与を支払った日から5日以内(暦日)に提出します。届出の対象は、社会保険(健保・厚年)の被保険者に対する賞与です(未加入者は届出対象外)。保険料のもとになるのは、賞与総額の1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」。健保・厚年・介護(40〜64歳)はその標準賞与額に料率をかけて労使折半し、本人分をその場で控除します。雇用保険は標準賞与額ではなく賞与総額に本人負担率をかけて控除。届書に記入するのは人別の標準賞与額で、保険料額は原則として機構側で算出・後日納入告知されます(社内では本人控除額を正確に計算・控除)。上限は健康保険が年度累計573万円、厚生年金が1か月あたり150万円(同月複数は合算)。支給予定だったのに払わなかったときは、予定月を登録している事業所のみ賞与不支給報告書を提出します。
進めるときは、次の順番だと迷いにくくなります。
- 賞与総額から、1,000円未満を切り捨てて標準賞与額を出す
- 健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険の本人控除額を計算し、その場で控除
- 賞与支払届に各人の支給額・標準賞与額を記入(総括表で集計)
- 支払日から5日以内に提出し、控えを保管(納入告知後に納付)
何が起きているか:賞与にも保険料がかかり、その記録を残す手続き
平成15年の総報酬制の導入から、賞与にも毎月の給与と同じように社会保険料がかかるようになりました。賞与支払届は、「誰に・いくら賞与を払い・いくらの標準賞与額になったか」を年金機構に届け出るための書類です。
この届出には、二つの意味があります。
- 保険料の確定につながる:届け出た標準賞与額をもとに、その月の健康保険料・厚生年金保険料が機構側で計算・確定されます(会社は納入告知に基づき納付)。
- 将来の年金額に反映する:厚生年金では、標準賞与額も将来の年金額の計算に算入されます。
つまり賞与支払届は、保険料と年金の記録を正しく残すための1枚です。だからこそ、金額と期限を落ち着いて確認しておきたいところです。
提出期限:支払日から「5日以内」

提出期限は、賞与を支払った日から5日以内(暦日)。毎月の給与計算と違って締め日基準ではなく、「支払った日」が起点になります。期限日が年金事務所の閉庁日に当たる場合は、翌開庁日が期限です(電子申請は期限内、原則24時間提出可能)。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 賞与の支給準備 | 支給額を確定し、明細を作成。あらかじめ標準賞与額と控除見込を試算しておく |
| 賞与の支払日 | 賞与を支給し、本人負担分の社会保険料・雇用保険料・源泉所得税を控除する |
| 支払日から5日以内 | 賞与支払届(人別の標準賞与額)を提出(電子申請・郵送・窓口など) |
| 納入告知後 | 年金機構からの納入告知書に基づき、会社負担分も含め保険料を納付 |
事業所に「賞与支払予定月」を登録している場合、予定月が近づくと年金機構から用紙が事前送付されることがあります。対象者が印字済みのこともあるため、支払い前に試算まで済ませておくと、支払い後すぐ5日以内の提出に移れます。
電子申請について:一部手続で電子申請が義務対象となる法人があります。対象や範囲、運用は改定されることがあるため、所管の最新案内で確認してください(例:賞与支払届などの社会保険手続が対象になる場合があります)。詳しくは日本年金機構の公式案内等の最新情報をご確認ください。
標準賞与額の出し方:1,000円未満を切り捨てる
保険料のもとになるのは、賞与総額そのものではなく、標準賞与額です。出し方はシンプルで、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てるだけです。
- 賞与総額 482,500円 → 標準賞与額 482,000円
- 賞与総額 600,000円 → 標準賞与額 600,000円(1,000円未満がないのでそのまま)
ここでいう「賞与」とは、年3回以下支給される、いわゆるボーナスや一時金のことです。労働の対償として支払われる賞与・期末手当・決算手当などが含まれます。
注意したいのが、年4回以上支給されるものの扱いです。同じ名前の手当でも、年4回以上支払われるものは賞与ではなく「報酬」として扱い、毎月の標準報酬月額(算定基礎届・月額変更届)の対象に入ります。賞与支払届には載せません。「年3回以下か、4回以上か」で行き先が変わる、と覚えておくと迷いません。
保険料の計算:折半するものと、しないもの(端数の扱いも)

賞与から本人負担として控除するのは、次の保険料と税金です。計算のもとになる金額と、折半の有無が種類によって違います。
- 健康保険料:標準賞与額 × 健康保険料率 → 労使で折半(本人は半分)
- 介護保険料(40〜64歳):標準賞与額 × 介護保険料率 → 労使で折半(本人は半分)
- 厚生年金保険料:標準賞与額 × 厚生年金保険料率(18.3%)→ 労使で折半(本人は半分)
- 雇用保険料:賞与総額 × 雇用保険料率(本人負担分)→ 本人負担のみ
- 源泉所得税:賞与額 − 社会保険料等を基に税額表で算出 → 全額本人
届書に書くのは人別の標準賞与額です。保険料額は原則として機構側で算出・納入告知されます。社内では、上の区別に沿って本人から差し引く額を正確に計算・控除します。
端数処理の目安
- 雇用保険料は、計算後の1円未満は切り捨て。
- 健保・厚年・介護は、機構の算定基準の端数処理(1円未満の四捨五入等)に合わせる。社内の控除額は円単位で統一しておくと実務が安定します。
料率は年度・地域・事業区分で変わります(例:雇用保険は一般・建設等で異なり、本人負担率も年度で変動)。計算前に必ずその年度の最新料率を公式情報で確認してください。
計算例:賞与50万円のとき、いくら引く?
例として、40歳未満(介護保険なし)・一般の事業の従業員で、賞与総額が500,000円。料率は仕組み説明のための例として、健康保険10.00%・厚生年金18.30%・雇用保険の本人負担0.6%とします。
手順
- 標準賞与額:500,000円(1,000円未満なし)
- 健康保険(本人):500,000 × 10.00% ÷ 2 = 25,000円
- 厚生年金(本人):500,000 × 18.30% ÷ 2 = 45,750円
- 雇用保険(本人):500,000 × 0.6% = 3,000円(1円未満切捨て不要)
- 本人の社会保険・雇用保険合計:73,750円
- この後、賞与額から上記を差し引いた額を基に、賞与に対する源泉所得税を税額表で計算・控除
「折半するもの(健保・厚年・介護)」と「賞与総額にかけるもの(雇用保険)」を分ければ、落ち着いて計算できます。
上限と、迷いやすいケース
- 健康保険の上限:標準賞与額は年度(4/1〜翌3/31)の累計で573万円が上限。累計が573万円を超えた分は健保料の対象外。人別の累計を簡易表やシートで通期管理しておくと安心です。
- 厚生年金の上限:1か月あたり150万円が上限。同月に複数回支給した賞与は合算して判定します。
- 資格喪失日の前後に支払う賞与:資格喪失「日以後」に支払った賞与は対象外。資格喪失「日前」に支払えば対象です。例:6/30退職(資格喪失日=7/1)の方に、6/25支給は対象、7/5支給は対象外。
- 育児休業中などの免除:一定の要件を満たす育児休業期間中は、賞与にかかる保険料が免除される場合があります。要件や期間は最新の公式情報で確認してください。
- 賞与を支払わなかったとき:賞与支払予定月を登録しているのに支払わなかった場合は、賞与不支給報告書を提出。予定月を登録していない事業所は不要です。
迷ったら、その人・その回だけ所轄へ確認でOKです。全部を暗記する必要はありません。
影響:金額や期限のずれが、保険料と年金記録に響く
- 標準賞与額を誤る(千円未満を切り捨てない等)→ 本人控除額・納付額がずれる
- 雇用保険を標準賞与額で計算してしまう/折半してしまう → 控除過不足
- 年4回以上の手当を賞与扱いで届出 → 本来は報酬(標準報酬月額)の対象で二重計上の恐れ
- 提出遅延・失念 → 確定・納付が後ろ倒しになり、訂正対応が発生
- 不支給の報告漏れ(予定月登録あり)→ 機構から照会
どれも、標準賞与額の計算と5日以内の提出を押さえれば防げます。スピードより金額確認を一つずつ。
明日やること(まずはここだけ)
- 支払予定月の登録を確認:自社の賞与支払予定月の登録有無と、用紙送付の流れを把握
- 最新の料率をそろえる:健保(自社の都道府県)・厚年・雇用保険の当年度料率を確認し控える
- 簡易試算シートを用意:総額→標準賞与額→本人控除額が出る最低限のシートを準備(円単位で統一)
この3つで、支払い直後から届出・納付までがぐっと楽になります。
チェックリスト(現場用・優先度つき)
最低ライン(必須・全員)
- これは「年3回以下」の賞与か(年4回以上は報酬扱いで届出先が別)
- 標準賞与額=賞与総額の1,000円未満切捨てで算出した
- 健保・厚年・介護は折半、雇用保険は賞与総額×本人率で計算した(区別できた)
- 期限は支払日から暦日5日以内。提出方法(電子・郵送・窓口)を決めた
- 源泉所得税まで控除した(社会保険料控除後の税額表で算出)
次点(該当者のみ)
- 介護保険は40〜64歳のみ対象
- 上限チェックは「年度累計が400万円超の見込み」または「今回の賞与が300万円以上」の人だけ実施(健保=年度累計、厚年=同月合算で月150万円)
- 育休・退職・資格喪失の前後など特例に当たりそうな人だけ、要件・取扱いを公式情報で確認
代替・免除(回ることを優先)
- 料率確認は、給与システムや協会けんぽの自動更新が担保できればOK(手計算は省略可)
- 不支給報告は、賞与支払予定月を登録していない事業所は不要
- 健保の年度累計管理は、簡易シートで年2回更新でも可(高額支給者は毎回更新)
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賞与支払届は、一度で完璧に覚えようとしなくて大丈夫です。 今日、「標準賞与額は1,000円未満を切り捨てる」「提出は支払日から5日以内」という二つの軸が整理できたなら、もう大きな山は越えています。年に一度か二度の手続きだからこそ、今回つくった試算シートや控えが、次のあなたを助けてくれます。一つずつ、落ち着いて進めていきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。社会保険・雇用保険の取扱いは、個別の事情や法改正によって変わります。保険料率や上限額・免除要件・電子申請の対象手続等の最新情報は、日本年金機構・協会けんぽ・厚生労働省の公式情報でご確認のうえ、最終的な判断は社会保険労務士・所轄の年金事務所など最新の公式情報でご確認ください。