
ハラスメント相談窓口の設置と運用の基本|ひとり労務ガイド
「ハラスメントの相談窓口を作らないといけないらしい」。 社長にそう言われて、あるいは自分で調べていて、頭を抱えていませんか。専任の担当も、立派な制度もない。相談が来たらどう対応すればいいのかも不安。そもそも、ひとりで労務を回している自分が「窓口」になっていいのだろうか——。そんなふうに、一歩目でつまずいてしまう気持ち、とてもよくわかります。
まずお伝えしたいのは、相談窓口は豪華な仕組みでなくていいということです。大切なのは、①相談を受ける人・連絡先を決めること、②それを従業員に知らせること、③相談が来たら適切に対応する段取りを用意しておくこと——この3つがそろっていれば、小さな会社でも立派な窓口になります。専用の部署も、特別なシステムもいりません。
この記事では、ひとり労務でも今日から用意できる相談窓口の作り方を、周知の仕方・記録・秘密の守り方まで、順番に一緒に整理していきます。
結論:ハラスメント相談窓口は、①窓口担当・連絡先を決める → ②相談方法(メール・電話・面談など複数)を用意する → ③全従業員に周知する → ④受けた後の対応手順とプライバシー保護を決めておく、の4ステップでつくれます。相談窓口の設置と適切な対応は、労働施策総合推進法(パワハラ)や男女雇用機会均等法(セクハラ・マタハラ)などで事業主に義務づけられた措置の柱のひとつです。担当者を1人置くだけでも要件は満たせますが、社内に相談しにくい人のために外部窓口(社会保険労務士・弁護士・専門機関など)を併せて用意しておくと、より安心です。相談したことを理由に不利益な取扱いをしないこと、プライバシーを守ることも、あわせて社内に明示しておきましょう。
進め方は、次の順番だと迷いません。
- 窓口担当と連絡先を決める(誰が・どの手段で受けるか)
- 相談方法を複数用意する(対面が苦手な人のためにメールも)
- 全従業員に周知する(知られていない窓口は無いのと同じ)
- 受けた後の対応手順を決めておく(記録・秘密保持・不利益取扱いの禁止)
何が起きているか:窓口は「作る」より「知られて、機能する」ことが大切
相談窓口というと、立派な規程や専用システムを想像して身構えてしまいがちです。でも、法律が事業主に求めているのは、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整えることです。つまり、大切なのは見た目の立派さではなく、「困った人が、ためらわずにたどり着ける入口があるか」という一点です。
ここでよくあるのが、窓口を作ったつもりでも、実は従業員がその存在を知らない、というすれ違いです。就業規則の奥に一行書いてあるだけでは、いざというとき誰も思い出せません。反対に、担当者ひとりでも、連絡先がきちんと知られていて、相談したら真剣に受け止めてもらえるとわかっていれば、それは十分に機能する窓口です。
- 窓口の役割:ハラスメントに気づいた人・受けた人が、安心して声を上げられる入口をつくること
- 法的な位置づけ:相談体制の整備と適切な対応は、事業主に義務づけられた措置のひとつ(労働施策総合推進法など)
- セクハラ・マタハラも同じ窓口でよい:パワハラ・セクハラ・妊娠出産等に関するハラスメントは、一元的に相談を受けられる体制が望ましいとされています
- 大切なのは規模でなく実効性:担当1人でも、知られていて、適切に対応できれば要件を満たせます
つまり窓口づくりは、大がかりな制度設計ではなく、「入口を決めて、みんなに知らせる」仕事です。ここが整えば、あとは相談が来たときに落ち着いて動ける準備をしておくだけです。
明日やること:ひとり労務でも作れる相談窓口の4ステップ

一度に完璧を目指さず、ひとつずつ進めれば大丈夫です。
ステップ1:窓口担当と連絡先を「決める」
まず、相談を受ける人を決めます。ひとり労務なら、当面あなた自身が担当でも構いません。ただし、相談内容によってはあなたや社長自身が行為者に近い立場になることもあります。そんなときのために、社外の相談先(社会保険労務士・弁護士・外部相談サービスなど)をひとつ用意しておくと、相談者に逃げ道ができて安心です。担当と連絡先(メールアドレス・電話番号など)を、シンプルに書き出すことから始めましょう。
ステップ2:相談方法を複数「そろえる」
相談方法は、できれば複数用意します。面と向かって話すのがつらい人のために、メールや専用フォームがあると、ぐっと相談のハードルが下がります。対面・電話・メールのうち、まずは2つでも大丈夫です。「どの手段でも受け付けます」と伝えられる状態にしておきましょう。
ステップ3:全従業員に「知らせる」
ここが、いちばん見落とされがちで、いちばん大事なところです。窓口は、知られていなければ存在しないのと同じです。朝礼・社内掲示・メール・給与明細への同封・入社時の説明など、届く手段で繰り返し知らせます。あわせて、「相談しても不利益な扱いはしない」「秘密は守る」という2点を必ずセットで伝えると、従業員は安心して使えるようになります。
ステップ4:受けた後の手順を「備える」
最後に、相談が来たときにあわてないよう、対応の流れを先に決めておきます。誰が聴くか、聴いた内容をどう記録するか、誰に共有するか、プライバシーをどう守るか——。ここは、相談を受けたその場での動き方とも重なります。詳しくは関連記事の初期対応の記事もあわせて確認してみてください。
影響:窓口の有無が、トラブルの「その後」を大きく変える
相談窓口があるかないかは、いざという場面で大きな差になります。窓口があれば、従業員は問題を社内の早い段階で声に出せます。小さな違和感のうちに相談してもらえれば、深刻化する前に対応できることも少なくありません。
反対に、相談する場所がないと、従業員は我慢を重ねた末に、体調を崩したり、外部機関に直接相談したりすることになりがちです。会社としても、初動が遅れたぶん対応が難しくなります。窓口は、従業員を守る仕組みであると同時に、会社を守る仕組みでもあるのです。
そして、窓口を作ること自体が、「この会社はハラスメントを見過ごさない」という静かなメッセージになります。使われないのがいちばんですが、「いざとなれば相談できる」という安心感が、職場の空気を少しやわらげてくれます。
チェックリスト:相談窓口を用意するとき確認すること
準備の途中で迷ったら、次のリストに立ち返ってみてください。
- 相談を受ける担当者と、その連絡先を決めたか
- 社内で相談しにくい人のために、外部の相談先を用意したか
- 相談方法を複数(対面・電話・メールなど)そろえたか
- パワハラだけでなく、セクハラ・マタハラも受けられる体制にしたか
- 窓口の存在を、全従業員に届く方法で周知したか
- 「相談しても不利益に扱わない」ことを明示したか
- 「秘密(プライバシー)を守る」ことを明示したか
- 相談を受けた後の対応手順(聴き取り・記録・共有範囲)を決めたか
- 相談記録を、アクセスを絞った安全な場所に保管する準備をしたか
- 就業規則やハラスメント方針にも、窓口の位置づけを書いたか
すべてに丸がつかなくても、落ち込まないでください。窓口を作ろうと調べて、ここまで読んでいる時点で、あなたはもう従業員を守る側に立っています。
判断に迷う点や、規程への落とし込み、外部窓口の選定などは、抱え込まずに社会保険労務士・弁護士など専門家に早めに相談しましょう。ひとりで完璧に仕上げようとしなくて大丈夫です。

相談窓口づくりは、立派な制度を一から設計する仕事ではありません。入口を決めて、みんなに知らせて、来たときにあわてない準備をしておく。まずはそれだけで十分です。使われないのがいちばんですが、「いざとなれば相談できる場所がある」——その安心が、職場をそっと守ってくれます。今日ここまで読んで備えようとした時点で、あなたはもう、現場を守る一歩を踏み出しています。
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